ヘビを気持ち悪いと恐れるのは生得的な感情です。猛毒を持つヘビに安易に近づいた個体が生命を落とし、警戒した個体が生き延びて子孫を残したことで、ヘビへの強い嫌悪感が「選択」されました。これが進化論の標準的な説明で、ヒトだけでなくチンパンジーの子どもも同じようにヘビを恐れることがわかっています。長大な進化の時間軸のなかで一部のヘビが毒を持つようになり、それに対して他の生き物が、長くてにょろにょろ動くものを嫌悪するようになることで対抗しました。私たちはこうした「共進化」の末裔なのです。 ところでここで、「イヌやネコをかわいがってヘビを嫌うのはヘビに対する差別だ」と主張するヘビ愛好家が現われたとしましょう。すべての生き物は生まれながらにして平等なのだから、長くてにょろにょろ動くというだけで、毒を持たない“善良な”ヘビまで嫌うのは「生き物権」の侵害だというのです。 「生き物権」を普遍的な自然権とするな