私は普段、女性の経験を聞くことを仕事にしている。だからこの世に性暴力があることや、それがもたらすダメージについて、たぶん人より多く知っている。 それでも子どもを育てていると、時々呑気(のんき)な気分になる。この世はこんなに善き場所なのかと思うことがある。 例えばそう。ある日プリンセスごっこをしていた幼い娘は、友達と一緒にドレスのまま近くのコンビニに出かけると、たくさんのお菓子を買って帰ってきた。持っていったお金では買えないお菓子の量に驚いて店を訪ねると、レジの女性は「お姫さまたちがかわいくて、好きな物を買いなさいと言ったんです。私からのプレゼントです」とお金を受け取らなかった。 例えばそう。去年の七夕、娘は短冊に「せんそうがおわりますように」「大きくなったらまほうつかいになれますように」と書いていた。ささの葉さらさら、のきばにゆれる―。世界中の戦地の惨状を知っても、子どもはまっすぐ未来を見