ソフトウエアの役割が高まることで、相対的に付加価値が下がる車体(ハードウエア)の開発――。これまで考えられなかった巨大な単位の「分業」が活発になっている。電気自動車(EV)のプラットフォームを他社に委ねる異例の事態が相次ぐ。自動車メーカーの独壇場だったプラットフォーム開発に、部品メーカーなどが挑み始めた。
新たに追加した立体音響技術「Spatial Audio(空間オーディオ)」を使うことで、左右のイヤホンの2つのスピーカーだけから音を聞くにもかかわらず、周囲のあらゆる方向から音が聞こえるようになる。仕組みは、まず仮想的なスピーカー(音場)を周囲に配置した状態を作り、そこから耳元までの伝達関数をシミュレーションする。その伝達関数をあらかじめ掛け合わせた音を再生することで、あたかもその音場から音が聞こえてくるように感じさせられる。 Spatial Audioでは、AirPods Proに搭載した加速度センサーやジャイロセンサーを使って頭の動きを検出し、頭の向きに合わせて音が聞こえる方向を調整する。つまり、後ろから声が聞こえるときに振り向けば、ちゃんと正面から聞こえるようになる。 この他、車などでの移動中に、身体全体の向きが変わったことでセンサーが頭の向きを誤検出して音の方向が変わらないよう、画
米Apple(アップル)の新型iPhone、同Google(グーグル)の「Pixel 5」――。注目の2大スマートフォンが5G(第5世代移動通信システム)に対応し、市場が盛り上がっています。ただ、「5Gスマホが進化の袋小路に陥っている感は否めない」と指摘する声もあります。そんな中、再び注目を集めているのがAR(拡張現実)グラスです。早ければ2021年に製品が登場します。その鍵を握る技術が見えてきました。 そもそも、「5Gスマホが進化の袋小路に陥っている感は否めない」とはどういうことでしょうか。 こう指摘した日経クロステックの記事『5Gスマホの袋小路、コンシューマー主導の終焉か』では、理由の一つとして「現在市場に登場している5Gスマホは、4Gスマホと画面サイズや解像度はほぼ変わらず、5Gならではの飛躍的な進化が見当たらないから」と述べています。 同記事では他にも、「5Gの高い性能が、スマホ本
米Teslaが2020年9月に開催した蓄電池戦略の説明会「Battery Day」は大きな注目を集めた。投資家には「期待外れ」とも言われたが、そこで述べられた「電池の航続距離54%増、価格56%減」が実現すれば蓄電池やEV業界にとっては大きな衝撃となる。その成否はパナソニックや韓国LG Chemなど既存大手電池メーカーの将来を左右しそうだ。 「期待外れ」─。それが、米Teslaが2020年9月に開催した同社のLiイオン2次電池(LIB)戦略説明会「Battery Day」に対して米国の株式投資家が持った最初の印象だったようだ。 理由の1つは、そもそも事前の期待が高まりすぎたからだ。TeslaのCEO Elon Musk氏自身が自らのツイッターなどで、同社が開発する革新的な電池について幾つも情報を流したことでさまざまな噂や憶測が乱れ飛び、動画配信サイトの「YouTube」にはどのような発表が
米Tesla(テスラ)は電気自動車(EV)「モデル3」などに、自動運転に対応した新しい統合ECU(電子制御ユニット)「FSD(Full Self-Driving)コンピューター」を搭載している。自前の半導体チップを使い、AI(人工知能)の処理性能を飛躍的に高めたのが特徴だ。そのAI半導体を分析すると、意外な結果が見えてきた。 「米Tesla(テスラ)のAI(人工知能)向け半導体は回路構成が驚くほど単純だ」。こう指摘するのは、ハンガリーAImotive(AIモーティブ)である。AIモーティブは自動運転用のAI半導体を手掛けており、自社製品のベンチマーク対象としてテスラのチップを分析した。 テスラが開発した半導体「FSD(Full Self-Driving)チップ」は電気自動車(EV)「モデル3」などに搭載されている(図1)。CPUコアやGPUコアに加え、AI処理を高速化するための専用回路であ
理化学研究所と富士通が共同開発したスーパーコンピューター「富岳(ふがく)」の本格運用が2021年に始まる。スパコンのランキング「TOP500」で4冠を獲得した富岳だが、その性能がいよいよ世に解き放たれる。 富岳が期待されているのは、単にハードウエア性能が高いからだけではない。理研は前世代のスパコン「京(けい)」の用途が広がらなかった反省を踏まえて、富岳においてはアプリケーション開発のしやすさを念頭に置いた「アプリケーションファースト」の設計思想を採用。プロセッサーの「A64FX」にArmの命令セットアーキテクチャーを採用したほか、OSには「Red Hat Enterprise Linux(RHEL)8」を採用するなど、ソフトウエア開発者にとって使いやすい環境を用意した。 日経クロステック EXPO 2020には、富岳の開発を主導した理研・計算科学研究センターの松岡聡センター長が基調講演に登
日本の研究者は優秀だが、ハングリーさ、良い意味での「バカ」が足りないというのが持論。企業研究所はシーズから出発して1つのことを掘り下げるより、社会的なニーズ、課題解決を研究の出発点にすべきと話す。基礎研究は年寄りの仕事とも断じる。米ミシガン大学教授と豊田中央研究所(豊田中研)の2足のわらじを貫き通し、豊田中央研究所代表取締役所長を務める菊池 昇氏に聞いた。(聞き手は木崎健太郎、中山 力=日経クロステック) 前編:「クルマ以外」の豊田中研、それはエネルギーの缶詰から始まった はこちら 菊池昇(きくち・のぼる) 豊田中央研究所 代表取締役所長/ミシガン大学機械工学科 名誉教授(Roger L. McCarthy Professor Emeritus of Mechanical Engineering) 1951年生まれ。74年東京工業大学工学部土木工学科卒業、75年米テキサス大学応用力学科修士
車載ソフトの欠陥(バグ)をゼロにする開発手法が注目を集めている。自動運転を背景に、ソフトの安全性やセキュリティーをこれまで以上に高める必要性が出てきたためだ。トヨタ系で電動パワーステアリング(EPS)大手のジェイテクトが量産に導入しようとしているほか、自動運転向けの車載SoC(System on Chip)を手掛ける米NVIDIA(エヌビディア)も同様の手法を検討している。 ジェイテクトやエヌビディアが検討しているのは、ソフトに欠陥がないことを数学的に証明する「定理証明(形式手法の一種)」と呼ぶものだ。自動運転やステアバイワイヤ(SBW)の実用化に伴い、車載ソフトの安全要求は急激に高まっている。これまではシステムの主機能に故障が発生した場合、安全機構によってシステムを停止すれば済んでいた。これに対し、自動運転やSBWではシステムを停止するとむしろ危険なため、安全機構によって最低限の機能(バ
コロナ禍がきっかけとなり、企業におけるテレワーク促進や、ITシステム導入によるワークフローの電子化など業務のデジタル化が進んできた。それ自体は喜ばしいことである。場所にとらわれない、移動を強いない働き方へのシフトは社会的にも健全であろう。できる職種/できない職種があることは百も承知だが、できる職種からテレワークなどITを使った仕事のやり方にシフトしてほしい。それは社会の、そして次の世代のためでもある。 一方で、現場の社員をサポートするIT担当者からは悲痛な声も聞こえてくる。 (A)「Zoomの使い方が分からない上司から何度も質問が来る……」 (B)「かたくなにITツールを使おうとしない人がいて困る」 (C)「チャットやメールのやり取りを一切読まない人がいる」 (D)「テレワークをできない部署から『不公平だ』と反発にあう」 上記はいずれも筆者が2020年6月以降に、複数の企業のIT担当者やメ
「このところ取引先からの支払い遅れが多発しています」 1カ月ほど前、2020年8月のお盆休みに入る時期に知り合いがこんな電子メールを送ってきた。彼はメーカーの管理職で機器やその関連サービスを取引先に売り込む立場だが、売掛金の回収も仕事である。 こちらは家にいて仕事をしていたが、メールが気になったので連絡を取り、彼と話した。 中小企業は大丈夫、遅れるのは大企業 「新型コロナウイルスの影響で中小企業の調子が悪いのでしょうか」 「いえ、中小規模の取引先は通常通りです。支払いが遅れるのはいずれも大企業です」 「なぜでしょう」 「問い合わせてみたところ遅れの理由はどこも同じでした。テレワークに移行した際、紙を使っていた従来のやり方をやめ、新しい情報システムを導入した。ところが担当者が支払い手続きをしていなかった」 「よく分かりません」 「新しいやり方、新しいシステムへの切り替えが周知徹底されていなか
「熟練研究員よりも25倍速く発見できた」─。そう誇らしげに発表したのは、昭和電工、産業技術総合研究所(AIST)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、先端素材高速開発技術研究組合(ADMAT)(図1)*1。人工知能(AI)など先端の計算科学を材料開発に応用するマテリアルズインフォマティクス(MI)の成果を報告した。 人工知能(AI)を活用したマテリアルズインフォマティクス(MI)では、より良い材料の素早い発見が可能になる。昭和電工、産業技術総合研究所(AIST)らは、熟練研究員よりもAIが優れた物質を発見できたとする研究成果を発表した。〔出所:昭和電工、産業技術総合研究所(AIST)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)、先端素材高速開発技術研究組合(ADMAT)〕
スタート以来、日経クロステックの名物コラムとなった「テクノ大喜利、ITの陣」。今回はその第23回だ。毎回、複数の識者に共通のお題(質問)を投げかけ、識者にはそれに答える形で論陣を張ってもらう。今回は夏の特別企画として枠を2倍に拡大して、識者8人に暴論、奇論を織り交ぜ熱い弁舌を振るってもらう。 お題は「デジタル革命の時代に『サラリーマン』じゃ生き残れない」。識者の6番手には、日本の地方自治体のCIO(最高情報責任者)補佐官などを歴任した韓国人コンサルタントの廉宗淳氏が登場する。デジタル革命で訪れる「限界費用ゼロ社会」を見据えながら、ビジネスパーソン、特にIT業界の技術者に生き残る道を示す。日本に貼られた「IT後進国」のレッテルの謎にも言及する。(編集部) 韓国ソウル市公務員を経て、1993年に来日。2000年にe-Corporation.JPを設立し代表取締役社長に就任。2005~2010年
はっきり言って、大企業かベンチャー企業かを問わず、デジタルを使って新たなビジネスを興そうとしている人たちにとって、今、これ以上ないくらいの千載一遇のチャンスが訪れている。ひょっとしたらインターネットが世界で爆発的に普及し、EC(電子商取引)などの試みが始まった1990年代半ばに匹敵するか、あるいはそれ以上の機会が生まれているかもしれない。 今そうした状況を生起させているものは何かと言うと、取りも直さずパンデミック(世界的大流行)を引き起こした新型コロナウイルスだ。全世界で多くの人が亡くなり、多くの企業や個人事業者が苦境に陥っている現状を捉えて、不用意に「千載一遇のチャンス」などとはしゃぐのは不謹慎であることは承知している。だが冷徹に状況を見渡すと、今が新たなデジタルサービスの創出にとって前代未聞の機会であることは容易に納得できるはずだ。 だってそうだろう。1990年代半ばのインターネットの
「ADAS(先進運転支援システム)の進化は、半導体の進化そのものだ。性能とコストを両立するためには、半導体メーカーとスクラムを組んで先々のロードマップまで考える必要がある」。SUBARU(スバル)第一技術本部 自動運転PGM ゼネラルマネージャー 兼 先進安全設計部 担当部長の柴田英司氏は、同社のステレオカメラを用いたADAS「アイサイト(EyeSight)」の半導体戦略について、このように説明した。 同社は長年にわたりステレオカメラを内製で開発しており、2025年以降の次世代ADASにおいてもステレオカメラを中核とする考えである。 20年8月20日に予約を開始した新型ステーションワゴン「レヴォーグ」では、アイサイトの最新版を標準装備する(関連記事)。新世代アイサイトは、大きく3つの特徴がある。(1)交差点事故の対応強化、(2)高速道路での運転支援拡大、(3)ステレオカメラの刷新である。
SUBARU(スバル)が先進運転支援システム(ADAS)を刷新する。「新世代アイサイト」と名付けた改良版の最大の驚きは、中核を担うステレオカメラをはじめとする主要部品を根本的に見直した点だ。これまで20年近くアイサイトの進化を支えてきた日立オートモティブシステムズ(以下、日立オートモティブ)やルネサスエレクトロニクス(以下、ルネサス)の日本勢から、海外の大手部品メーカーに乗り換えた。 スバルは、2020年末に納車を開始する予定の新型ステーションワゴン「レヴォーグ」から新世代アイサイトの搭載を始める(図1)。新世代品で目指したのは、(1)交差点での衝突など事故を回避できるシチュエーションを増やすことと、(2)高速道路での運転支援の拡大――の2つである。 「もちろん相当悩んだ。それでも、交差点事故への対応と高速道路での高度な運転支援を両立させるためには、ステレオカメラをゼロから見直す必要があっ
NTTコミュニケーションズに対する2つのサイバー攻撃が明らかとなった。延べ約900社・組織の顧客情報が外部に流出した可能性がある。撤去予定だった海外の運用サーバーの「隙」を突かれた。後日、社員になりすました不正アクセスも判明した。攻撃者は端末の多要素認証を無効化し、社内システムに入り込んでいた。 「まさか日本のセキュリティー業界のリーダーであるNTTコミュニケーションズが被害を受けるとは」。サイバーセキュリティーに詳しい業界関係者は口をそろえる。 NTTコムは2020年5月28日、サーバーなどの自社設備がサイバー攻撃を受け、顧客情報が外部に流出した可能性があると発表した。7月2日には、社員になりすました攻撃者から不正アクセスを受け、顧客情報の流出範囲が拡大した恐れがあることも公表した。 一連の攻撃により、防衛省や海上保安庁、厚生労働省など単純合算で延べ約900社・組織の通信関連工事情報が外
経営者:「インフラも見ることができる、良いITエンジニアがなかなかいないんですよ」 ITエンジニア:「インフラ? 勘弁してください。二度とやりたくありません……」 これは、経営者とITエンジニアの間に見られる乖離(かいり)である。筆者の経験では、特に「地方都市」でこの傾向が強い(具体的な都市名を挙げると無用な波紋を生み前向きな議論が進まないため、あえてぼかすことをご理解いただきたい)。 両者の溝はどのようにして生まれるのか、どう向き合うべきか。今回はこのテーマについて考えてみたい。 「開発ありき」「作ってなんぼ」、そもそもインフラ業務が認知されない Webサイトやアプリケーションを作っておしまい。サーバーやデータベース、ネットワークなどバックエンドのことは気にしない。あるいは意識から漏れる。いわば、「フロント重視」「バックエンド軽視」の状況を悪気なく作り出す。 その背景には「見えないものを
リリース、障害情報などのサービスのお知らせ
最新の人気エントリーの配信
処理を実行中です
j次のブックマーク
k前のブックマーク
lあとで読む
eコメント一覧を開く
oページを開く