日本の労働市場に寄生し、ピンハネで肥え太る悪質な人材派遣業者。彼らの増殖と繁栄は、底辺の労働者のさらなる困窮と表裏一体である。知られざる人材派遣業界の闇と、「一億総活躍社会」を掲げながら平然と労働者をモノ扱いしつづける政府・厚労省の欺瞞を暴く。 文/中沢彰吾(ノンフィクションライター) 口をつぐんでうつむく500人の中高年 「静かにしろ! 私語厳禁だ」 やせて神経質そうな銀ぶちのメガネをかけた、長身のダークスーツ姿の若い青年の怒声が超高層ビル街の谷間に響いた。彼の前に並んだ普段着姿の中高年の男女はそれまでにこやかに世間話を楽しんでいたが、叱られた子供のように口をつぐんでうつむいた。 相手は自分たちの息子のような年齢だが、青年のご機嫌を損ねてはいけないと誰もがおどおどしていた。 2014年12月1日、西新宿にある住友ビル前の広場には異様な光景が広がっていた。小学校の朝礼よろしく整列させられた