ライトノベル(ラノベ)出身作家が書いた大人向け小説では今、高殿円(たかどのまどか)さん(34)の『トッカン』(早川書房)も話題だ。ヒロインは税務署勤務の25歳の徴収官。難敵の滞納者相手に泣き笑いし、成長する姿が光る。2000年にデビューし、40冊以上のラノベ作があるが、従来の異世界歴史ファンタジーから一転、現代の働く女性の心情を活写したのは驚きだ。 「ラノベには大人向け文芸で十分通用する人がいる」。同作の担当編集者・小塚麻衣子さんはその才能に注目してきた。3か月に1作の執筆を迫られる厳しい世界で鍛えられた筆力も魅力で、若い読者を一般文芸に呼び込む効果も期待する。 一方、高殿さんは「現実社会のものは今のライトノベルでは、(需要がなく)書けない」(「ミステリマガジン」8月号)と今後はリアルな舞台が好まれる大人向けとの両輪で執筆する意向だ。「作家と出版社で求めていたものが一致した」(小塚さん)こ