家で仕事をするのは好きだけれど、まったく外へ出なかった日は、もの足りない気持ちになる。 そう言うと、ハヤさんが意味ありげにうなずいて答えた。 「閉じ込められた魂は、自由を求めるものです。『憧れる』のもとになった古語『あくがる』には、魂が体から離れてさまよう、という意味がありましたね」 「なるほど……。私がコンビニへお菓子を買いにいくのも、憧れを満たしている行為というわけか」 まぜかえしながら、ハヤさんの昔語りが始まるのを待った。 △ ▲ △ ▲ △ お千代様の屋敷で、年に幾度か行われている集いの席で、伊作が語った話である。 「母は亡くなる数年前から、脚の具合を悪くして、表へ出られなくなりました。それでも膝行りながら、家の内のことをやってくれて、ほんとうにありがたいことでした」 と、涙ぐむ。 伊作は先頃、母親の一周忌法要を終えたばかりだ。 その母御の生前に起こったという、不思議な出来事だった