「コイじゃないのか?」 「違います、コイじゃありません」 昼休憩から戻ってきた男性社員2人が、声高にしゃべっている。となりの部署の課長と、その部下の江戸川さんだ。 (恋?) 優海は思わず、耳をそばだてた。 「でも、あの大きさはどう見てもコイ、紅白のニシキゴイだよ」 「いいえ、金魚だそうです。お店の人から聞きました」 今度は別の意味で興味がわいてくる。 優海の祖父は、金魚の研究と飼育が趣味で、30センチ以上に育てた金魚も多かった。子供の頃、夏休みに泊りがけで遊びに行ったとき、いっしょに金魚の世話をしたことをなつかしく思い出す。 「そんなに大きな金魚なんですか?」 会話に入っていくと、 「このあいだ測らせてもらったら、34.5センチメートルありました」 江戸川さんが誇らしげに答えた。祖父と同じで、かなりの金魚好きなのだろう。 聞けば、その金魚がいるのは、会社にほど近いお蕎麦屋さんだそうだ。好奇