■津田・国民思想論・3 子安宣邦 『古事記』は読み継がれ、語り継がれているか 1 「古事記ー一三〇〇年目の真実」 雑誌『現代思想』2011年5月の臨時増刊号に「古事記ー一三〇〇年目の真実」というタイトルをもった特集号がある。欧米発の「現代思想」を先駆的に紹介することを任としてきたこの雑誌は、思い出したようにネイティヴな問題を特集号に組んでみたりする。『古事記』とはこの雑誌で何年置きかに繰り返し特集されるテーマである。その時々の思想モードにしたがって『古事記』は再発見されるものであるかのように。この特集号の「編集後記」で編集者はこう語っている。 「途方もないと思う。いまから一三〇〇年前に語られ、紡がれ、書きとめられた物語が、こうして読まれ続けているということを、いったいどのように考えたらいいのだろう。当たり前のことだけれど、この物語を語り継いだ人たちは、ものを