先日取り上げた、鄭忠海「朝鮮人徴用工の手記」を読了。 筆者の鄭忠海氏は1919年生まれ。1944年に徴用によって広島の東洋工業に動員。翌年の原爆投下により被爆し、終戦後に帰国した。この本は、在韓被爆者渡日治療活動に携わっていた井上春子氏が、鄭氏の手記を見せてもらったことがきっかけで出版に至ったものだ。 古庄正ほか「朝鮮人戦時労働動員」によれば、本書は岡田邦宏や西岡力、杉本幹夫などによって「強制連行否定論」の根拠にされているという。また、毎度お馴染み(?)「強制連行論のイザヤ・ベンダサン」*1こと鄭大均氏も「在日・強制連行の神話」でこの本の一節を引用し、「それを読む限り『強制連行』という言葉は事実を歪めているという印象を受ける。」*2と述べている。 実際本書を読んでみると、鄭忠海氏は被動員者としては(被爆したことを除いては)比較的恵まれた環境だったようだ。食事もそれなりに充実していたようだし