奥泉光、熊野純彦「ここにしかない出会い 岩波文庫と私 2」(in 岩波文庫編集部編『岩波文庫と私』*1岩波書店、2017、pp.12-21) 冒頭の部分をメモ; 奥泉 若い頃、同じ学習塾でアルバイトをしていた熊野さんと『資本論』の読書会を一緒にやったことがありましたが、僕は大学に入るまで、社会科学には関心が全然なかったんです。哲学方面にもそれほどなくて、まあ小説は好きだったので、大学に入ったら文学でもやろうかな、ぐらい、それがたまたまマルクスを読む機会があって『資本論』を読んだら、これが面白い。それからはヴェーバーだなんだと読むようになったんですが、塾で会った熊野さんは哲学者・廣松渉さんの弟子で、当然マルクスを読んでいる。じゃあ、ちょっと一緒に読もうか、となったんですね。 熊野 ひと夏毎晩飲んでね、奥泉さんがまだ、古代経済史と旧約聖書学が交わるところが専門の若手研究者だった頃のことです。