月1回の割で回ってくる『労働新聞』の書評コラム「本棚を探索」、今回私が取り上げるのはマイケル・サンデル『実力主義も運のうち 能力主義は正義か?』(早川書房)です。すでにベストセラーになっている本書ですが、私の切り口はちょっと斜め方面からになります。 https://www.rodo.co.jp/column/131006/ 2019年度の東大入学式の祝辞で、上野千鶴子は2つのことを語った。前半では「大学に入る時点ですでに隠れた性差別が始まっています。社会に出れば、もっとあからさまな性差別が横行しています」と、将来待ち受けるであろう女性差別への闘いを呼びかけ、後半では「がんばったら報われるとあなたがたが思えることそのものが、あなたがたの努力の成果ではなく、環境のおかげだったこと忘れないようにしてください」と受験優等生たちのエリート意識を戒めた。 後者の理路をフルに展開したのが本書だ。刊行1年
計量経済学 ミクロデータ分析へのいざない 作者:末石 直也日本評論社Amazon データ分析業界の友人から「読んでみたら物凄く良かった」と勧められて買ったのが、こちらの一冊。同名の書籍は沢山あるので、ここでは著者の末石先生のお名前を取って「末石本」と呼ばせていただきますが、これが本当に物凄く良くて感嘆させられるばかりでした。 ということで、門外漢が書いて良いものかどうか迷うところですが簡単に書評をまとめてみました。特に操作変数法を中心とする因果推論・自然実験まわりの確かな知識を得たい人にはお薦めだということを最初に書き添えておきます。なお、いつもながらですが僕の理解があやふやなため書評の中には怪しい箇所もあるかと思いますので、お気付きの方はコメント欄なりでご指摘くださると幸いです。 本書の内容 第1章 線形回帰とOLS 第2章 操作変数法 第3章 プログラム評価 第4章 行列表記と漸近理論
以前、桝本純さんのオーラルヒストリーに関心を持って「今世紀最高の本」とまで絶賛していた「女性」さんという方(一人称「俺」のこの方の生物学的な雌雄の別は存じ上げませんが)が、『ジョブ型雇用社会とは何か』について、あまりほかの方がつっこまないところで、しかし私としては秘かにつっこんで欲しいなと思っていたところに、うまい具合につっこんでいただいています。 https://twitter.com/ssig33/status/1447750147375435778 濱口桂一郎さんの新刊読みました。一番よかったの国がハイエンド外人を水増しする話で、もしメンバーシップ雇用のOJTでハイエンドになれるなら、そこに後からハイエンド外人でもはまるはずだけどそうなってない、つまり日本の労働者はほぼ全てノースキルローエンドであることが示唆されている。 では日本のハイエンド人材がどこに消えてるかというと、これは学位
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Twitter、Facebook、Instagram……2010年代はSNSが爆発的に普及し、さまざまな分野で大きな影響力を持つようになった。中東で行われた民主化運動「アラブの春」もSNSが大きな役割を果たしたといえるだろう。 しかし、SNSの隆盛は、しっかりとした主張のうえで地道に活動するよりも、瞬間的に耳目を集める話題を打ち出した方が賢く有効だという風潮ももたらしたと語る作家・思想家の東浩紀氏。ここでは、同氏の新著『ゲンロン戦記 「知の観客」をつくる』を引用し、わかりやすさばかりが求められる風潮に抗い、「べつの可能性」を生み出してきた悪戦苦闘の日々を振り返る。 ◇◇◇ SNSが社会に大きな影響力を与えるようになったテン年代 なぜゲンロンという会社を立ち上げたのか。それは時代と無関係ではありません。まずは大きく時代から振り返ってみます。 株式会社ゲンロンは2010年4月に創業しました(正
「知の観客」をつくる 東浩紀 著 「数」の論理と資本主義が支配するこの残酷な世界で、人間が自由であることは可能なのか? 「観客」「誤配」という言葉で武装し、大資本の罠、ネット万能主義、敵/味方の分断にあらがう、東浩紀の渾身の思想。難解な哲学を明快に論じ、ネット社会の未来を夢見た時代の寵児は、2010年、新たな知的空間の構築を目指して「ゲンロン」を立ち上げ、戦端を開く。ゲンロンカフェ開業、思想誌『ゲンロン』刊行、動画配信プラットフォーム開設……いっけん華々しい戦績の裏にあったのは、仲間の離反、資金のショート、組織の腐敗、計画の頓挫など、予期せぬ失敗の連続だった。10年の遍歴をへて哲学者が到達した「生き延び」の論理。 書誌データ 初版刊行日2020/12/9 判型新書判 ページ数280ページ 定価946円(10%税込) ISBNコードISBN978-4-12-150709-9 書店の在庫を確認
書誌情報:ちくま学芸文庫(カ-49-1),655頁,本体価格1,800円,2020年7月10日発行 ノーベル賞で読む現代経済学 (ちくま学芸文庫) 作者:トーマス・カリアー発売日: 2020/07/10メディア: 文庫 『ノーベル経済学賞の40年』(筑摩選書上・下,2012年)の文庫版。2009年までの41年間の64名の受賞者すべてを対象として,主な業績を中心に,また,エピソードを添えながら,紹介した好著である。2010年以降2019年までについては文庫版解説の瀧澤弘和が「これまでの研究との連続性だけでなく,経済学が新たな領野を開拓して,制度設計やより実践的な政策評価に焦点を当てたものへと変化しつつある様子も窺うことができる」(605ページ)とまとめている。 さて,本書に戻ると,受賞年代毎にひとりひとりの業績を辿るのではなく,自由市場主義者の経済学(ハイエク,フリードマン,ブキャナン),ミ
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