2023年3月31日にデジタル庁より発表された、最終アップデート版アプリによる収集データ詳細(Excel)より読み解ける統計の特徴について説明した記事です。 変更履歴 初版:2023年3月31日: 連続ツイートを取り込み、若干表現を加筆して掲載 要旨 COCOAの通知発生に関するデータは、公衆衛生の研究・政策に資するデータであった可能性が高い COCOAの通知発生回数の増減は、人流データよりも人々の行動をくっきりと捉えていた可能性がある COCOAの通知発生回数の増減率から、新規感染者数の増加傾向を早く気づけたかもしれない 最終アップデート版で収集した300万件以上のデータの集計結果を、今後の「デジタル技術を活用した感染症対策」に活かしてほしい 細かめの集計データもExcel形式で公開されたので、専門家の方にも検討していただきたい COCOAが捉える人々の行動を踏まえて、アプリからの通知の
こちらで関連ツイートをブクマしたように、疫学者と経済学者のコロナ対策に関する考え方の違いが大きくなっているようである。簡単に言うと、経済学者が政策介入の無い経済活動を重視し、オミクロン株のインフルエンザ並みの軽症化に鑑みてコロナへの特措法の適用廃止を求めているのに対し、疫学者はオミクロン株の重症化率の低さ以外の要因も重視して、政策介入の撤廃に慎重な姿勢を示している*1。 言うなれば、変異株の未知性を警戒する疫学者側が、経済学のいわゆるナイトの不確実性的な要因を考慮して政策手段を採る余地をなるべく残そうとしているのに対し、経済学者側が法学者張りに法律のトリガー条項を厳格に解釈し、ナイトの不確実性的な要因は捨象する姿勢を取っているように見える。やや皮肉な言い方をすれば、経済危機の際にナイトの不確実性的な要因を持ち出して思い切った財政政策手段を採ることを求めた内外の声に抗し、財政規律や経済の自律
インタビュー記事:ゴードン・ベル賞COVID-19研究特別賞受賞!坪倉誠先生が語る飛沫・エアロゾル飛散シミュレーションが切り拓く未来
パンデミック中、英国中の人々が公的医療機関NHSに感謝し、応援していました。(写真:ロイター/アフロ) 英国は「マスクを外してコロナ禍が終わった」国という理解が広まっていますが、本当の状況はかなり異なります。本記事では、英国におけるコロナと医療の全般的な状況を説明します。 英国がマスク着用をやめた理由 英国がマスク着用義務などの生活規制を撤廃したのは、ワクチン接種が国民に広く行き渡ってから重症患者の顕著な急増がみられなくなり、病院の状況が「通常の範囲内」であると判断した結果の政治判断です。 しかしながら、英国の公的医療NHSは日常的に深刻に崩壊していますので、日本の参考にはなりません。その現状を以下に書きます。 パンデミック以前から崩壊していた英国の医療 英国のNHSは無料で診察してもらえますが、診てもらえるのは基本は一般医(GP)のみで、たとえば皮膚科や耳鼻科、循環器科といった専門医にみ
Philippe Lemoineというコーネルの博士課程にいる研究者が、自らが所属するThe Center for the Study of Partisanship and Ideology(CSPI)という組織のブログに「Have we been thinking about the pandemic wrong? The effect of population structure on transmission」と題した長文のエントリを上げ、タイラー・コーエンが「Why does R vary so much in pandemics?」というコメントを添えて リンクしている。Lemoineはツイートでその内容を解説しているので、以下にその一部を引用してみる。 However, as I argue in the post, I think it's very difficult
2020年6月24日、日本記者クラブにおいて、新型コロナウイルス感染症対策専門家会議の脇田隆字氏、尾身茂氏、岡部信彦氏が、構成員一同を代表して、これまでの活動を総括するとともに、今後の感染拡大のリスクに備えて、新たな専門家助言組織のあり方を提案するため、記者会見を行いました。 会見した3名は、コロナ専門家有志の会メンバーでもあります。より多くの方に知っていただき、共に考えていただきたいとの思いから、会見時に使用されたスライドと提言書本文を組み合わせて構成しました。ノーカット映像も併せてご覧ください。 提言書のPDF版はこちらよりご覧いただけます。 ※なお、掲載にあたり誤字脱字・重複表現を修正しています。修正箇所は末尾に記載しました。 1. はじめに 我が国では、近年、新しい感染症による深刻な打撃に直面して来なかったため感染症に対する危機管理を重要視する文化が醸成されてこなかった。こうした状
「先進的な時系列モデルは疫学者の「R」を超えるのか?( Do advanced time series models outperform the epidemiologists “R”?)」というコメントを添えてタイラー・コーエンが「Rよさらば:疫病を追跡し予測する時系列モデル(A farewell to R: time-series models for tracking and forecasting epidemics)」という論文にリンクしている。論文の著者はAndrew HarveyとPaul Kattumanというケンブリッジ大の2人の経済学者。 以下は論文の結論部。 New time-series models are able to track the progress of an epidemic by providing nowcasts and forecasts
Taming a pandemicOne year after its emergence, severe acute respiratory syndrome coronavirus 2 (SARS-CoV-2) has become so widespread that there is little hope of elimination. There are, however, several other human coronaviruses that are endemic and cause multiple reinfections that engender sufficient immunity to protect against severe adult disease. By making assumptions about acquired immunity f
今後の未来像は 予防接種という行為は、接種者自身はもちろんのこと、それ以外の方の感染機会を減らすことに繋がる。そのため、そのような間接的な防御が人口内で積み重なり、流行自体を防ぐ効果が得られたものを集団免疫効果と呼ぶ。そして、流行排除のための閾値について、従来株の場合、予防接種率が60%超程度ではないかと過去の記事で私も言及してきた。 実際に、イスラエルではロックダウン下で2回目接種が完了した者の割合が40%を超えたところで新規感染者数が減少傾向に転じたことから、国内外含めて予防接種に大きな期待が広がったのである。 残念ながら、上記の見通しは楽観的すぎた。それはどうしてなのか。加えて、現時点までの科学的な知見から今後の未来像をどのように見込んでいるのか。簡単ではあるが、本稿で皆さんと共有したい。 いずれの要素も集団免疫閾値に直接的に影響を与える。特に、前回の記事でお伝えした通り、(1)に関
トップページ > 最新情報 > 新着情報 > 新型コロナウイルス感染症新規患者数増加の裏にある、追えていない感染経路を見いだす質的研究の結果速報 研究成果のポイント 新型コロナウイルス感染症の積極的疫学調査の結果では「感染経路不明」と判定される事例が多く、効果的な感染対策を行うにはこの経路を明らかにする必要がありました。そこで入院時に感染経路が不明であった事例を対象に調査を行いました。その結果、対象患者の64%において既知の感染リスクの高い行動歴がありました。行動歴からは感染リスクが高い場面が延べ24場面同定され、それらの場面の88%が飲食に関連しており、92%においてマスクが着用されていませんでした。また、特段の新規の感染経路を見いだすことは出来ませんでした。この調査により、感染には飲食がやはり多くの事例で関係していることとともに、感染防止に対する意識付けや十分な知識が不足していることが
クラスター対策に3密回避。未知の新型コロナウイルスに日本では独自の対策がとられたが、その指針を描いた「専門家会議」ではどんな議論がなされていたのか? 注目を集めた度々の記者会見、自粛要請に高まる批判、そして初めての緊急事態宣言……。組織廃止までの約四カ月半、専門家たちの議論と葛藤を、政権や行政も含め関係者の証言で描くノンフィクション。 プロローグ│疱瘡神と乱世 第1章│未知のウイルスを前に 2月3日〜24日 それぞれのルビコン川 厚労省アドバイザリーボード 専門家会議発足 市民への説明 独自の見解の準備 専門家会議としての会見へ 第2章│クラスター対策と「情報の壁」 2月24日〜3月11日 クラスター対策班 「一斉休校」と北海道の感染拡大 若者への呼びかけ 感染者情報をめぐる軋轢 学生ボランティア 第3章│桜の季節の感染拡大 3月11日〜22日 御用学者の本分 遅れた検疫対策 大阪・兵庫の
Predicted domination of variant Delta of SARS-CoV-2 before Tokyo Olympic games, Japan Kimihito Ito, Chayada Piantham, Hiroshi Nishiura https://doi.org/10.1101/2021.06.12.21258835 概要 日本で採取されたSARS-CoV-2株のヌクレオチド配列を用いて、日本で流通している他の株に対するR.1、Alpha、Deltaの相対的な瞬間再生産数をそれぞれ1.256、1.449、1.776と推定した。想定される発症間隔の分布に応じて、R.1は1.198〜1.335、Alphaは1.342〜1.596、Deltaは1.557〜2.00の範囲になると考えられる。日本では2021年7月12日頃に、Deltaの頻度がAlphaに引き
西浦博氏*1語る(4月9日); 岩永直子*2「「大阪、兵庫はすぐさま『緊急事態宣言』をうつべき」 8割おじさんが懸念する背筋の寒くなる大流行」https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/covid-19-nishiura-20210409-1 岩永直子「緊急事態宣言「効果はあったが減らし切れなかった」 もったいない政策を繰り返していいのか?」https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/covid-19-nishiura-20210409-2 岩永直子「「五輪のリスク議論、タブー視するな」 予防接種は年末まで届かない覚悟で対策を」https://www.buzzfeed.com/jp/naokoiwanaga/covid-19-nishiura-20210409-3 3本目の記事から、「オリンピック」に言及している部
CREPEコラム このコーナーでは政策評価を行うことの意義や周辺情報についてのコラムを掲載しております(肩書は発表当時のものとなります)。 CREPECL-13: 社会問題の因果関係を解明する「自然実験」の確立:ノーベル経済学賞2021 川口大司(東京大学公共政策大学院・経済学研究科教授) 2021.12.22 カード、アングリスト、インベンスの三氏に贈られた2021年のノーベル経済学賞。受賞理由は「自然実験への貢献」だ。本稿では、三氏の研究内容のみならず、彼らが巻き起こした論争や、経済学のあらゆる分野にもたらしたインパクトとその意義を語るとともに、政策現場での活用に向けた展望を描く。 CREPECL-12: COVID-19下の求職市場――ハローワークの公開業務データからの考察 川田恵介(東京大学社会科学研究所准教授) 2021.10.1 長期にわたる新型コロナの影響は、人々の雇用にも及
レポート マクロ経済・経済政策 【開催報告】「新型コロナウイルスと政策:経済学者によるワークショップ」 October 21, 2020 経済政策 新型コロナウイルス 新型コロナ:経済政策 マルチメディア 東京財団政策研究所「経済政策・経済思想ユニット」では、2020年9月12日、東京財団政策研究所の猪野明生リサーチアシスタントによる企画立案のもと、経済学観点での新型コロナウイルス研究に関する情報共有と議論を研究者間で行う「新型コロナウイルスと政策:経済学者によるワークショップ」を開催した。 新型コロナウイルスに関する報道の多くでは現状の感染者数に焦点が当たりがちになり、これまでを振り返り新型コロナウイルスが人や企業の行動や経済活動にどのような影響を与え、またそれに対する政策が効果的であったのか、といった観点からの発信はあまり多くなかった。そんな現状を踏まえて実施した本ワークショップの発表
はじめに 1月21日にJournal of Clinical Medicineに掲載され、報道でも取り上げられた私たちの研究〔Anzai & Nishiura(2021)〕について、明治大学の飯田泰之さんと経済産業研究所の中田大悟さんの2人からSNSを通じて実名でコメントをいただきました(元論文は、こちらhttps://doi.org/10.3390/jcm10030398)。SNSでは科学的議論以外に飛び火しない建設的な議論をすることが難しいですし、今私は緊急事態宣言下のデータ分析で大変多忙にしています。論文の作法としても、SNSは場外戦のようになってしまいます。ただし、日本で期せずして、一定以上に報道が広がりましたのでSNSで話題になりました。このまま放置するよりも、私が詳細を広くお返事した方が、物事が正常に進むと思って以下を執筆することとしました。 最初に申し上げますが、今回の私たち
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