ブックマーク / econ101.jp (49)

  • タイラー・コーエン「トマ・ピケティに賛成できない理由」/「大著の読み方」

    (訳者補足:関連エントリがあります。) ●ピケティと同様のアイデアであるピケティの共著論文の紹介 ●クルーグマンのコメント ●ノア・スミスのコメント ●デロングのコメントのhimaginary氏による紹介 ●クルーグマンの書評英語) トマ・ピケティに賛成できない理由 Tyler Cowen “Why I am not persuaded by Thomas Piketty’s argument“(Marginal Revolution, April 21, 2014) フォーリン・アフェアーズに寄せた書評はこちら(Firefoxを使っていて開かない場合には、「新しいプライベートウィンドウで開く」を使うように)。ここではその全部には触れずに、ブログ読者のためにいくつかの点をやや異なった用語を使って言い換えてみたい。 1.収益率が経済の成長率より高くなったままならば賃金が上がる可能性が高い

    タイラー・コーエン「トマ・ピケティに賛成できない理由」/「大著の読み方」
  • クルーグマンコラム配信停止のお知らせ

    突然ですが、ご好評いただいているポール・クルーグマンのコラムですが、今月12月いっぱいをもって配信を停止します。 これまでの15ヶ月間、クルーグマンコラムは多くの人に読まれてきました。クルーグマンの知名度もさることながら、現在の日のメディアになかなか見られないリベラルな視点からの経済分析が多くの読者を獲得できた一番大きな理由だと思います。毎月概ね7万ビューある当サイトですが、その半分はクルーグマンのコラムがたたき出している数字です。 にもかかわらず配信を停止するに至ったのはニューヨーク・タイムズ紙からの配信料金の値上げ、円安なども負担増加の要因ですが、皆様からの寄付を主な財源として運営していくには充分な資金が持続的に確保できなかったことが最大の理由です。 現在のところ、大変ありがたいことに毎月980円の支援をいただけるCloud Paymentに登録いただいている方は約30名ほどおられま

    クルーグマンコラム配信停止のお知らせ
  • メンジー・チン「最低賃金引き上げのマクロ経済的な意味/信念と計量経済学:最低賃金の巻」

    最低賃金引き上げのマクロ経済的な意味 Menzie Chinn “Some Macro Implications of a Minimum Wage Hike“(Econbrowser, March 27, 2014) (訳者補足:この議論に馴染みがない方(最賃を上げると何故雇用が減ったり、それを相殺する効果が出たりするのかなど)は、過去のこのエントリなどを参照されると今回のエントリを理解しやすいかと思います。) ほんの僅かな雇用数も影響を及ぼすし、ほんの僅かなインフレも影響を及ぼす。しかし、労働者への所得分配の比率を高めることに対する抵抗は今後も続くだろうと私は確信している。 次の表は、雇用効果の議論に関する研究の概説であるゴールドマン・サックスの「最低賃金引き上げで何が起こるか?(What to Expect from a Minimum Wage Hike)」(3月25日付、ネット上

    メンジー・チン「最低賃金引き上げのマクロ経済的な意味/信念と計量経済学:最低賃金の巻」
  • ハフバウアー&シミノ「TPPなんて大したものじゃないとクルーグマンはおっしゃりますが」

    Gary Clyde Hufbauer, Cathleen Cimino,”“No Big Deal” says Krugman” (VOX, 17 March 2014) ニューヨーク・タイムズ紙掲載の論説記事で、ポール・クルーグマンは環太平洋パートナーシップ(TPP)をして「大したものじゃない」と言っている。稿では、クルーグマンによるTPP反対論の主要点を検討する。第一に、クルーグマンは政治をTPPに対してではなく国内政策へと振り向けるよう述べている。第二に、関税は既に低いためにTPPによる利益は僅かなものになると彼は主張する。そして稿では、クルーグマンの論説のより広いメッセージ、すなわちグローバル化とと政治主導による自由化の時代は終わったという点について指摘を行う。 自由貿易主義者を自称するポール・クルーグマンは、ニューヨーク・タイムズ紙に掲載されたその驚きの論説(2月27日

    ハフバウアー&シミノ「TPPなんて大したものじゃないとクルーグマンはおっしゃりますが」
  • ポール・クルーグマン「格差をよくよく見てみると」

    Paul Krugman, “Taking a Closer Look at Inequality,” Krugman & Co., March 21, 2014. [“The French Comparison,” The Conscience of a Liberal, March 9, 2014] 格差をよくよく見てみると by ポール・クルーグマン Andrew Testa/The New York Times Syndicate IMF の研究者ジョナサン・D・オストリー,アンドリュー・バーグ,カラランボス・G・タンガリーディスの3名が書いた,再分配と成長に関する論文 (pdf) について,ずっと頭をはなれない懸念についてぼくも何か書くと約束しておいた.著者たちの結論によれば,少なくとも普通に行われている範囲の再分配政策にはマイナスの効果はなく,格差を減らすことから,プラスの効果

    ポール・クルーグマン「格差をよくよく見てみると」
  • タイラー・コーエン 「イッたふりの経済学」(2004年1月31日)

    ●Tyler Cowen, “The Economics of Orgasm”(Marginal Revolution, January 31, 2004) 経済学者になってからもうかなり長い歳月が経っており、これまでに(風変わりな論文も含めて)それなりの数の論文を目にしてきた。そのため、次のような要約(アブストラクト)で始まる論文に出くわしても、決してたじろぎはしない。 稿では、男女間のセックス(love-making)に関するシグナリングモデルを提示する。セックスを通じて互いの愛を確かめ合っている男女は、行為の最中に、自らのオーガズムの程度について相手に偽りのシグナルを送る可能性がある。例えば、絶頂に達していないにもかかわらず、イッたふりをするかもしれない。男女ともに、相手のオーガズムの程度に関する事前確率に基づいて愛の営みに励むが、その事前確率は年齢をはじめとした相手の属性と関連付

    タイラー・コーエン 「イッたふりの経済学」(2004年1月31日)
  • ポール・クルーグマン「アメリカ人が憤ってるのは妬みからじゃない,怒ってるんだ」

    Paul Krugman, “Anger, Not Envy, Is Raising Americans’ Ire,” Krugman & Co., March 14, 2014. [“Envy Versus Anger,” The Conscience of a Liberal, March 3, 2014] アメリカ人が憤ってるのは妬みからじゃない,怒ってるんだ by ポール・クルーグマン Ozier Muhammad/The New York Times Syndicate いきなり――あるいは,いまさら突然であるかのように――格差が世間の意識にのぼっている.1パーセントの連中も,その忠実なる擁護者連中も,どう対処すればいいかわかってないご様子だ. そうした反応のなかには,どうかしてるものもある――「水晶の夜だ!」だの「我々を殺しそうな勢いだ」だの.そのどうかしてるっぷりは,かなり広

    ポール・クルーグマン「アメリカ人が憤ってるのは妬みからじゃない,怒ってるんだ」
  • ポール・クルーグマン「アメリカの保守主義を再定義する」

    Paul Krugman, “Redefining Conservatism in the U.S.” & “Market Domination,” Krugman & Co., March 14, 2014. [“Nation of CRINOs,” The Conscience of a Liberal, March 7, 2014; “Silicon Oligopsony,” The Conscience of a Liberal, March 1, 2014] アメリカの保守主義を再定義する by ポール・クルーグマン Drew Angerer/The New York Times Syndicate ぼくらがほんとに必要としてる名称はこれだ:「名ばかりの中道右派」 『ワシントンポスト』の政治科学ブログ『モンキー・ケイジ』(おすすめ)のジョン・サイズが,この前,よく繰り返されている

    ポール・クルーグマン「アメリカの保守主義を再定義する」
  • ポール・クルーグマン「アメリカの財政支出策を振り返る:成功と失敗」

    Paul Krugman, “Looking Back at the Successes, And Failures, of the Stimulus,” Krugman & Co., Feb 28, 2014. [“The Stimulus Anniversary,” Feb 18, 2014] アメリカの財政支出策を振り返る:成功と失敗 by ポール・クルーグマン Ruth Fremson/The New York Times Syndicate このところ,アメリカの「復興・再投資法」(Recovery and Reinvestment Act) に関する議論が盛況だ.いますぐに言えるぼくの見解は,制定当時と変わりない:このプランは経済的に大いにいいことをしたけれど,同時に政治的に大いに害もおよぼした. 経済的にいいことは,単純な話だ:2009年以来,ぼくらみんなが目の当たりにしてき

    ポール・クルーグマン「アメリカの財政支出策を振り返る:成功と失敗」
  • ポール・クルーグマン「この世をば我が世とぞ思うウォール街のスーパースターたち」

    Paul Krugman, “Masters of the Universe, Superstars of Wall Street,” Krugman & Co., March 7, 2014. この世をば我が世とぞ思うウォール街のスーパースターたち by ポール・クルーグマン SERGUEI/The New York Times Syndicate ハーバードの経済学者グレッグ・マンキューが,また 0.1 パーセントの連中を擁護する論を書いている――『ニューヨーク・タイムズ』に寄稿した今回の文章「しかり,富裕層にはその資格がある」(“Yes, the Wealthy Can Be Deserving”) は,なんというか,大したものだ. でも,その「大したもんだ」部分に踏み込む前に,映画スターがどうのこうのって話,マンキュー氏の最初の論点をしっかり押さえておこう.そうね,一握りの人たちは

    ポール・クルーグマン「この世をば我が世とぞ思うウォール街のスーパースターたち」
  • ポール・クルーグマン「人々はほんとに分相応なものを受け取っているのか?」

    Paul Krugman, “Do People Really Get What They Deserve?,” Krugman & Co., February 21, 2014. [“Vox Anti-Populi“; このブログ版の訳文はすでに掲載済みです)] 人々はほんとに分相応なものを受け取っているのか? by ポール・クルーグマン PETT/The New York Times Syndicate ぼくの学生だったリチャード・ボールドウィンが編集してる VoxEU は,いま現在の政策をとりあげる経済オンライン・ジャーナルだ.そこに,格差に関するすぐれた記事が2つ掲載されている. 1つ目は,英ウォーウィック大学の経済学教授アンドリュー・オズワルドとメルボルン応用経済学・社会研究所のフェローであるナッターヴート・ポータヴィーによるもので,相続や自らの努力によってではなくて,宝くじに当

    ポール・クルーグマン「人々はほんとに分相応なものを受け取っているのか?」
  • ノア・スミス「削減すれば政府は効率的になるか?」

    Noah Smiths “Does cutting government make it more efficient?“(Noahpinion, February 10, 2014) たくさんの人が次のように考えているように見える。A)政府はとても非効率的で、だからB)政府のサイズを小さくすればもっと効率的な社会にすることができる。でも実のところ、A)からB)は導かれない。そして実際、政府が一番非効率的だという事実は、政府の縮小がよろしくないということともなりうるんだ。 どうして政府は非効率的なんだろうか。インセンティブのせいだ。企業は一般的に、採用や投資の決定を限界費用あるいは限界便益計算に基づいて行う(ただ法人格がその妨げとなる場合もあるし、外部性がある場合にはこれは効率的ではないし、等々)。それに対して政府はそれとは別の類の費用便益計算に基づいて全体的に決定を行う。残念なことに僕ら

    ノア・スミス「削減すれば政府は効率的になるか?」
  • マーカス・ゴールドスタイン「お金をあげればうまくいく?」

    MARKUS GOLDSTEIN “Cash transfers: beyond protection to productive impacts“(blogs.worldbank.org, February 12, 2014) 今日はなぜ現金給付 [1]訳注;資金を元に何らかの援助事業を行うというのではなく、直接的に現金を配るという援助方式。 を行うか(世銀の同僚らによる最近の議論についてはここを参照)や、その計り知れないほどの効果(無数の文献があるが、例えばここにあるバークの議論や、ここ[邦訳]のデヴィッドのものを参照)についてもう一度話すのではなく、それよりもとある一つの事業に焦点を当ててみたいと思う。この事業は、FAOとUNICEFの保護から生産へ(PtoP;from protection to production)という事業なのだけれど、これは多数の現金給付プログラムをアフリカ

    マーカス・ゴールドスタイン「お金をあげればうまくいく?」
  • ポール・クルーグマン「中流階級を再定義する」

    Paul Krugman, “Redefining The Middle Class,” Krugman & Co., February 7, 2014. [“The Realities of Class Begin To Sink In,” January 27, 2014] 中流階級を再定義する by ポール・クルーグマン Victor J. Blue/The New York Times Syndicate アメリカにはおかしなことがあれこれある.その1つは,長らく見られる傾向として,自分のことを中流階級だと考えてる人たちがとてつもなく広範囲にまたがっている点だ――そして,彼らは自分を欺いている.国際的な基準にてらせば貧困者ってことになるはずの低賃金労働者たちは,中央値の半分を下回る所得でありながらも,自分たちは中の下にあたる階層だと考えている.その一方で,中央値の4倍や5倍の所得を

    ポール・クルーグマン「中流階級を再定義する」
  • ラルス・クリステンセン 「金融政策はあらゆる問題を解決するハンマーではない」

    ●Lars Christensen, “Monetary policy can’t fix all problems”(The Market Monetarist, December 22, 2011) 「一度ハンマーを手にすると何もかもが釘に見えるようになる」なんてことがよく言われるが、(このブログも含めて)マーケット・マネタリストのブログを読んで次のような印象を抱く人もいるかもしれない。お前らマーケット・マネタリストこそがまさに『ハンマー・ボーイズ』だ。何か問題に遭遇する度に「NGDP(名目GDP)目標を採用しさえすればその問題も解決されるのだ!」と(NGDP目標がありとあらゆる問題を解決するかのように)わめき散らしているじゃないか、と。しかし、これほど真実からかけ離れているものもない。 金融政策は「市場の失敗」に伴って引き起こされる問題を「解決」するために行使されるべきだとケインジア

    ラルス・クリステンセン 「金融政策はあらゆる問題を解決するハンマーではない」
  • ポール・クルーグマン「機会が失われたら起こること」

    Paul Krugman, “What happens when opportunities are lost,” Krugman & Co., January 23, 2014. [“A Hammock In Kentucky?“] 機会が失われたら起こること by ポール・クルーグマン Keith Meyer­s/The New York Times Syndicate 『ナショナル・レビュー』が実に面白い記事を掲載してる.ケヴィン・ウィリアムソンがアパラチアの現状について書いた文章で,アパラチア地域の苦境を伝える有益な描写になっている――あと,フードスタンプを交換可能にする方法も述べている.フードスタンプをいったんケースいっぱいの炭酸飲料に交換して,それをさらに現金その他と交換するんだって(記事はここで読める). ただ,そればかりじゃなくて,この記事には教訓も1つある:ウィリアムソン

    ポール・クルーグマン「機会が失われたら起こること」
  • ポール・クルーグマン「オランドの政策転換は間違いだ」

    Paul Krugman, “Hollande takes a wrong turn,” Krugman & Co., January 24, 2014. [“France by the Numbers” & “The Glittering Crises“] オランドの政策転換は間違いだ by ポール・クルーグマン /The New York Times Syndicate 「金のクロワッサンで人類を苦しめてもらっちゃこまるね.」 フランス大統領フランソワ・オランドがセイ法則をたたえたのに対して経済学者アラン・テイラーが返した言葉がこれだった(私信).オランド氏は記者会見で文字通りにこう言ってのけた:「供給は需要をつくりだすのです」――発言だけでなく,政策もサプライサイド経済学に移してしまった.しかも,やっぱり自分で「サプライサイド経済学」っていいながらね. ぼくにとって驚嘆だったのは,オ

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  • ディリップ・ラタ「移民についてのポール・コリアーの視野狭窄な提言」

    Dilip Latha “Collier’s Exodus: Reckless Recommendations” (blogs.worldbank.org, January 13, 2014) 世界の発展にとって移民は特徴的な問題だ。驚くことではないが、流入した移民をどう扱うかというのはこの時代においてもっとも難しい政策課題の一つであり続けている。ポール・コリア―の”Exodus: How Migration is Changing Our World(大移住:移民はどのように世界を変えているか;未邦訳)”は、この移民問題という複雑な現象を考えるにあたっての分析枠組みを構築することから始めている。すなわち、移民は移住元国家と移住先国家との間の所得格差によって引き起こされる。先行移民たちのネットワークは新たな移民を容易にし、そしてさらに先行移民たちは納税を行っている従来の住民の間の相互信頼を

    ディリップ・ラタ「移民についてのポール・コリアーの視野狭窄な提言」
  • ポール・クルーグマン「ビットコインが提起する現実世界の問題」

    Paul Krugman, “A Virtual Currency Raises Real-World Questions,” Krugman & Co., January 9, 2014. ビットコインが提起する現実世界の問題 by ポール・クルーグマン Nancy Palmieri/The New York Times Syndicate 実証経済学(実際の物事の仕組み)と規範経済学(物事のあるべき姿)の区別は,いつだって大事で,いつだって難しい. 実際,これまでぼくが書いてきたマクロ経済のいろんな問題では,すごく大勢の経済学者たちが,その区別をしっかりできないでいる.彼らは政治的な理由からでしゃばりな政府を嫌っていて,そこから,財政刺激がうまくいかない理由だとか,金融刺激が破滅的な結果をもたらすだろうといったことについて,ほんとにひどい論証を展開するにいたっている. でも,ここではマ

    ポール・クルーグマン「ビットコインが提起する現実世界の問題」
  • ティム・デュイ「敬意と所得の平等」

    Tim Duy “On Respect and Income Equality” (Tim Duy’s Fed Watch, January 06, 2014) 補足1:先日訳したノア・スミスのポストへ、タイラー・コーエンに続きティム・デュイが反応したもの。このテーマについてはhimaginary氏がマンキュー、クリス・ディロー、コーエン記事のコメント欄を紹介しているので興味ある方はそちらもどうぞ。 補足2:文中に引用されている映画やアダム・スミスの著作にはそれぞれ邦訳版が存在するが、ここでの訳は独自に行ったものなので注意。 私たちに必要なものは所得の平等ではなく敬意の平等であるとして、ノア・スミスが在りし日を思って嘆いている。 このままじゃいけないと思う。どれだけのお金を稼ぐかに関わらず、非熟練労働者の一生懸命な仕事が社会交流の中で価値あるものと見なされる社会へと立ち戻りたい。良き親、

    ティム・デュイ「敬意と所得の平等」