ブックマーク / www.newsweekjapan.jp/column (113)

  • 「お遊びの時間はおしまいだ」

    後藤健二さんとともに「イスラーム国」の人質にされていたヨルダン人パイロットのムアーズ・カッサーシバが、殺された。生きながら焼き殺されるという、残酷極まりない手口で。 ヨルダン国内はもちろん、アラブ諸国全体に激震が走っている。遺族はヨルダンのなかでも有力な部族で、激しい口調で報復を主張した。政府は国内に捕えられていたイラク人の死刑囚2人を、即刻処刑した。対「イスラーム国」包囲網に参加している湾岸の君主国政府はもちろん、イラク、パレスチナ、レバノンなど「イスラーム国」周辺国やエジプトは即座に、ヨルダンへの同情と追悼を表明した。 なによりも、生きたまま焼き殺すというやり方が、尋常でない衝撃を与えている。とはいえ、そのようなやり口はこれが初めてではない。アラブの人々の記憶に最近の出来事として思い起こされるのは、昨年6月、パレスチナ人の少年がユダヤ人に石油を飲まされ生きながらに焼き殺された事件だろう

  • 人質殺害事件に寄せて

    人人質事件は、残念な結果になった。 昨年六月に登場して以来、その残虐さで国際社会を震撼させてきた「イスラーム国」が、いかに深刻な問題かを、日は遅ればせながら実感したことになる。 この問題について、筆者はあまり語ってこなかった。少ない情報で、しかも人命がかかっていることで、あれこれ語ることがいいとは思えなかったからだ。この事件に関する日の報道を見ていると、解決に逆効果をもたらしたのではないかと懸念する。 そもそも、国内の普通の誘拐事件だったら、ここまで情報や憶測を垂れ流しにしただろうか。こうすればよい、ああすればよい、といったコメントが、いちいち日側の手の内、対応を犯人に晒しているとの自覚はなかったのだろうか。 犯人が海外だから、日国内で交わされる議論は聞こえないとでも思っているのかもしれない。だが、ネットに掲載される情報は日語でも簡単に自動翻訳にかけられるし、テレビ画像でもY

  • 嫌イスラームの再燃を恐れるイスラーム世界

    シャルリー・エブド誌襲撃事件は、世界を震撼させている。欧米諸国を、というより、世界中のイスラーム教徒を、だ。 フランス版9-11事件ともいえるほどの衝撃を与えたこの事件に対して、イスラーム諸国は即刻、テロを糾弾し、フランスへの哀悼を示した。フランスと関係の深い北アフリカ諸国や、経済的なつながりの強い湾岸諸国はむろんのこと、ほとんどの中東の政府、要人が深々と弔意を示している。エジプトにあるスンナ派イスラームの最高学府たるアズハル学院も事件への非難声明を出したし、欧米諸国から「テロリスト」視されているレバノンの武装組織ヒズブッラーですら、惨殺されたフランスの漫画家との連帯を表明している。 意地悪な見方をすれば、この事件がイスラーム教徒の「踏絵」と化しているともいえる。ちょっとでも犯人側をかばうような発言をして、今後吹き荒れるのではと懸念される欧米での嫌イスラーム風潮に巻き込まれて、「テロリスト

  • 「テロリスト」の向こうに潜むもの

    先週末、夜の昆明駅で起きた大量無差別殺傷事件は、中国で暮らす人たちに大きな衝撃をもたらした。公安当局の発表によると、わずか8人ほどが振り回した牛刀でなんと約30人が亡くなり、約150人近い人たちがけがを負った。事件の陰惨さとは別に、凶器が爆弾でないことを考えればこの犯人と犠牲者の人数比に驚かざるを得ないが、これが後に当局による「恐怖襲撃事件」(テロリズム)という判断の根拠にされた。 この「テロリズム」という判定がさまざまな論争を引き起こしている。 中国人が「テロ」という事態を意識するようになったのは、2001年の911事件からだ。中国が豊かになり始めた頃で、ちょうど同年夏には2008年の北京オリンピック開催が決まり、世界貿易機関(WTO)への正式加盟も秒読みに入っていた時で、「走出去」(外へ出て行く)とか「国際接軌」(国際化)とかいう言葉がもてはやされていた。世界に対する人々の興味が急速に

  • 人々はスマホに自分の運命を賭け始めた?

    今この瞬間、中国で暮らしているわけではない人に、中国の生活においてスマートフォンがどれだけ重要であるかを言葉で説明して理解してもらうのは難しいかもしれない。 もちろん、「日だってスマホなんてとっくに普及しているし、必需品になっている人は多いよ!」と思うだろう。でも、日で暮らしているわけではないわたしが言ってもこれまた理解してもらえないだろうが、北京や上海で暮らす人のスマホ依存率はたぶん、東京を超えている。 わたしも昨年の旧正月前に初めてのスマホを買ってから、ニュースや知り合いのジャーナリストが推薦する情報などをスマホで受信するようになって、原稿テーマの情報源はスマホからが5割、ツイッターやフェイスブックなどSNSが3割、購読しているメディアのニュースレターが2割になっている。ツイッターとスマホが別なのは、中国ではツイッターへのアクセスがブロックされるためにその利用に「壁越え」用ソフトが

  • も〜いーくつね〜る〜と〜お正月〜

    中華圏は1月31日に旧正月「春節」を迎えた。昔、香港で過ごしていた頃は、この旧正月が近づくと「眠らない」と言われるあの街にわやわやと1年に1度の正月ムードが広がり、人々の口から正月を迎える古い習慣が飛び出すようになる。例えば、旧暦12月23日には「かまどの神に感謝して奉る」日で、この日からかまどを休ませ、店にシャッターを下ろすレストランもあった。続けて同24日には「正月用の揚げ物を作る」、同25日は「正月用の蒸し物を作る」、同26日は「大掃除をする」、同29日は「入り口に福を迎える張り紙をする」、同30日は「家族揃って事する」、そしてその事を終えると正式に新しい1年が始まる。 だが、これは中国の農村部で一族郎党集まって過ごした時代の伝統をそのまま伝承したもので、共働きも多い香港でこれをきちんと実現するのは難しい。知り合いの若夫婦のほとんどは日頃家にいる親たちに正月の準備を任せ、正月2日

  • 「SHERLOCK シャーロック」ブームに思うこと

    にもファンの多い、イギリスBBC製作のドラマ「SHERLOCK」(以下、「シャーロック」)の最新シリーズを、中国にいるわたしは一足先に堪能させてもらった。中国では、2年間ファンを待たせ続けたプレミア放送が国イギリスで始まった2時間後に、BBC提供の中国語字幕付きが動画サイト「優酷 YouKu」で配信されたのだ。朝7時という時間にもかかわらず、配信から24時間のうちになんと500万回も視聴されたという。 香港紙『サウスチャイナ・モーニングポスト』は、「優酷」はその配信権の取得に1億人民元(約17億円)以上をかけたと伝えている。とはいえ、他のメディアは一切伝えていないので確証はない。ただキャメロン首相は一昨年にダライ・ラマと会談して中国にずっと無視され続けた後初めての訪中だったため、超低姿勢を貫き通し、英メディアには「土下座外交」とまで揶揄された。ネットで一度はファンからの要請をやんわり

    「SHERLOCK シャーロック」ブームに思うこと
  • チャリティ王の世界地図

    「香港映画の父」、ランラン・ショウが亡くなった。数えで107歳。大往生である。 彼が生まれた1907年は辛亥革命(1911年)前夜の清朝末。紡績業を営む裕福な家庭に生まれ、上海でアメリカ人が開いていた学校で学んだ後、10代の頃から長兄が作った映画会社で働き始めた。その後、映画市場開拓のために三兄とともにシンガポールに移住映画館を買収するビジネスに乗り出し、さらに映画製作を始める。長兄の会社は戦時中に香港へ移転。1958年に彼がそれを引き継いで香港で「ショウ・ブラザーズ」を設立した。 ショウ・ブラザーズはカンフー、任侠、お色気コメディ、そしてアクション映画と徹底的に庶民ウケする映画を作り続けた。そしてそれらは香港だけではなく、台湾や東南アジアの華人・華僑社会でも人気を博し、東南アジアの共通娯楽になった。1959年からは「ミス香港コンテスト」を主催して勝ち抜いた歴代ミスたちをそのまま映画に投

  • ビットコイン in 中国

    最近、ビットコインをめぐる動きが興味深い。とはいえ、中国ではつい先日、中央銀行がビットコインの中国国内での流通にストップをかける通達を行なった。今年になって中国で特に加熱しているというビットコイン取引だから、ある意味それも予想のうちの動きであり、市場の暴落に一瞬ネット上ではショックが走ったものの、IT関係者の間では相変わらずビットコインをめぐる話題がそれほど悲観論もなく続いている。 ビットコインとは英語で「Bitcoin」、この「bit」とはコンピュータが取り扱う情報に使われる単位だ。ビットコインはコンピュータの世界、つまりバーチャルな世界で流通する通貨のことである。今や世界中にあるその「取引所」を通じてビットコインを購入しさえすれば、その後日国内どころか海外で買い物する時にそれを使えば手数料もレートも心配する必要がなくなる。調べてみたら、それを実践した記者の体験記が日経新聞のウェブサイ

  • 中国と世界、そして日本

    今月に入ってまだ10日ほどが過ぎたばかりだが、世界はなんとも慌ただしい。 その最たるものが、先日のマンデラ元南アフリカ大統領の葬儀だ。列席のため現地を訪れたオバマ大統領らが首脳がスマホで「自分撮り(selfie)」に興じている写真が世界を駆け巡り、きっとスマホなんか使わない(使えない)古いタイプの政治家は「だから、スマホ世代は...」と眉をひそめたことだろうが、わたし以前目にした「機密が漏洩するおそれがあるため、大統領のスマホ利用は禁止」という報道はなんだったのだろうか、と考えた。もちろん、手にしたスマホはオバマ大統領のものではなかったのかもしれないが。 スマホと言えば、ちょっと脱線するが、今年6月に中国の国家主席、習近平と彭麗媛夫人がアメリカを訪問した時、こんな写真とツイートが流れてきたことがあった。 「携帯電話に夢中になり、あなたのパートナーを忘れるなかれ。彼があなたを必要とする時に携

    中国と世界、そして日本
  • 産むべきか産まざるべきか......一人っ子政策緩和がもたらすもの

    のメディアでは他の中国からの話題を排除してまで行われた、中国の三中全会(中国共産党中央委員会全体会議第3回会議)に関する報道。それが日の一般読者にとってどこまで大事なんだろう、と思ったのは、わたしだけじゃないはず。でも、伝統的な中国報道の現場では、やはりこうした中国共産党による「何とか会議」は外せないという意識は強く、普通の日人読者が読んでもよくわからないものがとても重視され続けている。 で、こちら中国でも、庶民の間では会議のことなどもうほとんど話題になっていない。唯一大きく注目されたのが一人っ子政策の緩和。経済体制や政治体制など結局は手が届かない話で、お上のやることを黙って受け入れるしかないが、我が家で子どもがもう1人産めるとなれば話は違う。文字通り「我が家の大事」いや「わが一族の大事」なのだから。 とはいえ、まだ実際の緩和が始まったわけではないが、三中全会の決定を受けて詳細が発

  • 中国のなかのアメリカ

    20日、米国の駐中国大使、ゲイリー・ロック氏が辞意を表明したというニュースが、ツイッター、そして中国国産マイクロブログの「微博」を駆け巡った。ネットメディアはもちろん、翌日の主要メディアも記事を載せている。ロック大使は以前、「『大使憎けりゃバックパックまで...』?!陳光誠氏騒ぎの舞台裏」でも少し触れたが、約2年半前着任のために中国へ向かう際に空港のスターバックスで列に並んでコーヒーを買った、中国国内出張でエコノミークラスを利用したことなどが、中国で新鮮な話題を提供してくれた。 ロック氏は、「アメリカ移民の郷」ともいわれる広東省台山出身の華僑家庭に生まれた移民第3世代。夫人の両親も台湾出身という、中国人の「目」には親しみやすく映る華人家庭である。その家族揃っての着任前、そして着任当初は中国側では官も民も「華人」アイデンティティを利用してうまく話題の緒を見つけられないか、と考えていたフシがあ

  • 吾輩は不機嫌である

    天安門広場のあの衝撃的なジープ炎上事件から2週間。だが、当局がメディア報道に規制を敷いているせいもあってか、すっかり人々の話題から消えている。表面的には当局による「テロ」、そして「犯人死亡、及び共犯者たち5人を逮捕」という発表のあと収束してしまった感じだ。 もちろん、経験豊かなメディア関係者や有識者からは疑義は出ている。だが現状もよくわかっている。ジープの運転者がウイグル人だったことから必ず新疆ウイグル自治区の事情を語らざるを得ないが、チベット、ウイグル、台湾などの領土問題は今、中国政府が最も神経を尖らせているイシューであり、下手に触れれば自分が木っ端微塵にされてしまうことを。 「テロ」の定義付けは、アメリカの911事件以降、中国政府にとって大事なカードになった。そして当局は国内外両面向けにこのカードをそれぞれ使い分けている。 911発生当時はテレビに流れる事件の様子を見ながら手を叩いて喜

  • 報道の裏事情

    「北京の街の様子は今はどうですか?」 天安門でジープが炎上した事件の後、日からこう訊かれた。「なんともないです」「あ、回復したんですね」「いや、回復も何も最初からなにも変化していません。一時道路が渋滞し、最寄りの地下鉄の駅が閉鎖されましたが、そんなことしょっちゅうだし、ほとんど何も影響を受けていない市民の方が多いです」 ジープにはねられて亡くなった方、ケガをした方は当にお気の毒で言葉もないが、世界で最も知られている広場の毛沢東の肖像画の下で炎をあげて燃えるジープはあまりにも出来過ぎた構図で、それだけで世界中の人々の目を引いた。だが、この事件は意外なことに、天安門という場所は我々ガイジンが考えているほど中国人にとって「心のランドマーク」ではない、ということを暴露した。事件を知った人たちはみんな一様に驚いているが、精神的にショックを受けたなどという声は聞かなかったからだ。「天安門といえば日

  • 中国風ゲンコツのおさめ方

    人にとって、「愛国」は「中国」と並べて考えたくないキーワードのナンバー1だろう。日人で「愛国」をたびたび口にする人でもそこに「中国」が並ぶとむっとするだろうし、「中国」という言葉をみても平気でも「愛国」は敬遠したい。たとえこの2つの言葉どっちも大好きという人がいたとしても、この2つとも苦手という日人の方がきっと多いはずだ。 だが、中国人はどうだろう。たぶん、一般的な日人が思い描くのは、「愛国」について尋ねられた中国人が狂喜乱舞、つばを飛ばしながらしゃべりまくるイメージではないか。 一般大衆という意味での中国人を想像するなら、わたしのイメージもそれに近い。わたし自身、中国人と「愛国」に関する話をしたことがないわけではない。もちろん常に相手をきちんと選んだうえでのことだった。だが、それでも結果的に「愛国とはなんぞや」という結論を見出す前に、相手が日中関係に横たわる深い溝にハマり込んで

  • 1年後の北京。人気は和食にラーメン、そして「半沢直樹」

    昨年9月に中国で起こった、激しい反日デモから1年余りが経った。わたしも中国大陸の先っちょにある香港での暮らしを入れればすでに大陸生活も20年を軽く超えたわけだが、確かにあそこまで大規模な「うねり」を感じたことはこれまでなかった。だが、そこから1年、北京のような都会ではすっかりあの「うねり」などどこ吹く風といったように街は姿を変えている。 ちょっと最近、数軒の日料理店に行くチャンスが続いたのだが、そこで見た光景はあの激しいデモと、その後デモには参加していなかった人たちにも「感染」した重苦しい空気とはまったく相容れないものだった。 店内の8割以上が中国人のグループで、みな手慣れた様子で和をつついている。さらに日人オーナーが醸しだすお店の雰囲気をみなが十分に楽しんでいる。以前のように周りが眉をしかめそうな、中国レストランでありがちなふるまいではなく、みながその店のルールと雰囲気に従って味わ

  • 薄煕来公判は始まりなのか、終わりなのか

    最近の中国はなんだか重い話題ばかりで気が滅入ってしまう。そんな中、元重慶市党委員会書記の薄煕来に対する汚職容疑の公判で、彼の口から夫人の不倫話や手下の横恋慕など思わぬ話題を飛び出してネットを沸かせたのが先週末。だが、終わってしまえばみなの視点は自然に「さて、判決は?」に向かう。 この大物政治家に対する判決については、当然のことながらさまざまな予測が飛び交っている。「ファンが多い」ので、先月2年の執行猶予付きの死刑判決を受けた劉志軍・元鉄道相と同じような温情判決におさまるだろうという声と、「ファンが多い」からこそその影響力を削ぐために厳しい判決が下る、という声がある。いろいろ見渡しても、この二つ以外に大して説得力を持つ予測はない。 だからこそ気が滅入るのである。「世紀の裁判」と言われて注目され、当局も微博を使って公開中継してみせるという画期的な裁判だった。しかし、結局は誰もが政府指導者たちの

  • 北京の夢

    「ぼく、仕事辞めたよ。大連に行くことにした」 劉くんがぼそっと言った。まさか、と思いつつ、「旅行?」と尋ねたら、「ううん、水曜日に引っ越すんだ。別に持っていくものもないんだけど」と答えた。それを聞いて「やっぱり...」と心のなかでつぶやきつつも、何を言っていいのか思いつかず言葉が出てこなかった。 言葉が見つからなかったのは、劉くんには申し訳ないが、彼が北京からいなくなることがショックだからではなかった。だが、「キミまでもが!」という思いが先走ったからだ。彼自身に何があったのか尋ねる前に、頭のなかを今年すでに北京を離れた知り合いの、さらにそのまた知り合いたちの顔が走馬灯のように横切った。その数をあとで指折り数えたら、もう10人近くもいた。 もちろん、彼らが北京を離れた理由はそれぞれだ。任期切れ、あるいは担当していたプロジェクトが終わった、あるいは結婚転職など、直接の理由だけを見ると、これほ

  • もう中国で一番有名じゃない加藤君への最後の手紙

    今週のコラムニスト:李小牧 〔7月16日号掲載〕 大切な友人である加藤嘉一君へ──。 君が北京大学の留学生として単身中国に渡ったのは、03年のことでした。その後コラムニストとして活躍。「中国で一番有名な日人」と呼ばれるほどになったのに、昨年の今頃突然南京大虐殺の真相を疑問視する発言をして中国で猛反発を受け、まるで追われるようにアメリカのハーバード大学に移った──この10年はまさに、中国語で言う「坐過山車(ツォクオシャンチョー)」、山あり谷ありでしたね。 おっと、加藤君にとって一番の大事件を忘れていました。昨年の秋、日の週刊誌が「東大合格」 という経歴詐称を追及すると、君はようやく事実を認め、日中国の読者に謝罪しました。 風の便りで聞いたところでは、君はこの6月でハーバードでの勉強を終えて、新たな人生の一歩を踏み出すそうですね。その拠点がアメリカなのか日なのか、あるいはわが祖国の中

    もう中国で一番有名じゃない加藤君への最後の手紙
  • 「朝日君」

    「日に行ってやりたいこと。それは日人による中国語での情報発信がどれだけ重要かを分かってもらうこと」 3年前の今頃、日の国際交流基金の招きで3ヶ月間日に滞在することになっていた、中国人ジャーナリストの安替は、北京でわたしと会うたびにこう言っていた。そして幸か不幸か、春から準備が進められていた彼の訪日まであと数週間という時になって、尖閣沖で中国漁船が海上保安庁の監視艇に体当りする事件が起きて漁船船長が拘束され、またその船長の釈放を求めて中国各地でデモが起きた。 「幸か」と言うのは、この事件に絡んで「中国のネットでは反日発言が渦巻いている」と報道されたおかげで、ネットで活躍するこのジャーナリストのタイムリーな訪日と発言がメディアに注目されたこと。「不幸」とは、日中間の摩擦に不快感をあらわにし、最初からこの1人の中国人ジャーナリストに警戒心丸出しで接した日人もいたこと。でも、あの時はまだ