デルタ株、次はオミクロン株と、変異相次ぐ新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)の脅威のもと、主要国は政府債務増に目もくれず財政支出拡大を続けている。 財政出動による景気の押し上げをいち早く理論化したのは経済学巨頭、J・M・ケインズの「一般理論」である。同著には寓話(ぐうわ)を織り交ぜている。財政当局が古瓶に紙幣をいっぱい詰めて廃坑に埋め、その穴を町のごみくずで地表までふさぎ、民間企業に紙幣を再び掘り起こさせれば、実質所得が増えるというものだ。 国内総生産(GDP)は国内の消費と投資に左右される。廃坑掘り出しは雇用を支える投資であり、取り出した現金は従事者たちに配分されて有効需要(カネの裏付けのある需要)を創出する。 コロナ禍での財政支出の多くは日米欧とも家計や中小・零細企業への現金給付、いわば「バラマキ」であり、廃坑の寓話に通じる。効果はというと、米欧では需要回復が目立つ。対照的