東日本大震災が起きた平成23年の4月から5月にかけ、被災地である福島県内をレンタカーで回った。津波の爪痕が生々しいいわき市の海岸部では、がれきと化した集落や、沈没船がそのまま残る港を見て、在りし日の風景との差に呆然とするしかなかった。 ただ、そんな中でわずかに救われる思いがしたのは、商店の扉や道ばたの看板など至るところに書かれていたこの言葉だった。 「自衛隊さん、ありがとう!」 不眠不休で被災者らの救出、支援に当たった自衛隊員の献身は、地元の人たちの心にしっかりと届いていた。「事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえる」(服務の宣誓)ことを誓い、実行している自衛隊に対し、国民がそれを評価し、感謝の気持ちをささげる。 あるべき道理を目撃したかのような気分だった。 ところが、その自衛隊の存在を憲法9条に明記しようという安倍晋三首相の提案が、なかなか実現に向