猛毒を注入するための深紅の「牙」を見せつけて威嚇するジョウゴグモ。(PHOTOGRAPH BY MARK WONG, THE AUSTRALIAN NATIONAL UNIVERSITY) その日、動物学者のマーク・ウォン氏は、オーストラリア、ニューサウスウェールズ州のタラガンダ州立森林公園でいつものようにクモを探していた。大きな石をひっくり返すと、ジョウゴグモの一種(Atrax sutherlandi)の巣穴があった。 「棒で巣穴をつついてみると、クモが飛び出してきました。最初に目についたのは真っ赤な鋏角(きょうかく)でした」とウォン氏は言う。鋏角とは、クモの口にある鋏(はさみ)状の器官で、獲物に毒を注入するのに使われる。(参考記事:「「青仮面」の新種のクモを発見」) ふつうの A. sutherlandi の背中と鋏角は黒くて光沢があり、腹部は暗褐色か暗紫色をしているが、そのとき巣穴か