米ニューヨーク・スタテンアイランドの木にとまる17年ゼミ=2013年6月6日、Suzanne DeChillo/©The New York Times
手元に置いた携帯電話がひっきりなしに鳴っている。ほとんどが取材依頼だという。2月24日のロシアによるウクライナ侵攻後、時の人になった。 引っ張りだこになるのには訳がある。相手に目線を合わせつつ、複雑な事象をわかりやすく説明する力。ロシアにもウクライナにもくみせず、膨大な軍事情報をつないで全体像を描き出す分析力。 「彼は言葉の力で一種の社会現象を起こしている」。そう話すのは、2019年、小泉さんを東大先端科学技術研究センター(先端研)に誘った先端研教授の池内恵さんだ。 「彼が話すと議論が整理されていくんです。いろんな人が投げた球を一つずつ拾い、それに答えつつまとめるという、非常に高度なことをやっている」。だが、人気の理由は、明晰さだけではなさそうだ。ときおり垣間見せるユーモアや、硬軟とりまぜた引き出しの多さ。自ら「軍事オタク」ぶりを見せて、楽しんでいるふしもある。 東京大学先端科学技術研究セ
モノであふれる雑然とした執務スペース。ロシアの自由な通信を守るためのサービスを続ける筑波大学客員教授・登大遊さんは、この長机でアイデアを形にする=須藤龍也撮影 コンピューターのサーバーが積み上げられた部屋で、大量に接続されたケーブルの通信ランプが、それぞれに緑色の点滅を繰り返していた。外部から接続されていることを示すものだ。 接続している人たちは、このサーバーを中継地点にして、世界各国のサイトにアクセスしている。 これは、「VPN(バーチャル・プライベート・ネットワーク=仮想専用線)」と呼ばれるサービスの一環だ。 VPNはもともと、企業など組織内のネットワークに外部から安全に接続する仕組みとして考案された。コロナ禍で在宅勤務をするために使い始めたという人も多いだろう。 VPNにつながる通信はすべて暗号化されており、接続する人がどのサイトにアクセスしているかなど、第三者が知るすべはない。 「
ロシアの代表的な反政権活動家であるアレクセイ・ナバリヌイ氏。機内で体調を崩し、側近らが「毒を盛られた」と主張している=2017年10月、中川仁樹撮影 ■「お茶に毒」過去にも ナバリヌイ氏は20日、西シベリアの街トムスクからモスクワに戻る機中で体調が悪化。集中治療室で人工呼吸器をつけられるほどの深刻な状態となった。ロシアの病院は「毒物は検出されなかった」としているが、側近は、その前に飲んだお茶を疑い、「政権に毒物を盛られた」と主張。治療と安全のため、国外への転院を求めた。受け入れたドイツ・ベルリンの病院は、神経剤の成分を体内から検出したとしている。 実は「お茶」は、以前にもロシア関連の暗殺事件で登場した道具だ。中でも記憶に残っているのが、チェチェン紛争でのロシア政府による残虐行為などを批判してきたノーバヤ・ガゼータ紙のアンナ・ポリトコフスカヤ記者が2004年、機内で出された紅茶を飲んで意識不
「カワイイは(日本人への)差別表現だ(Kawaii is a slur)」という主張のきっかけとなった黒人の女子大生のコスプレ動画=本人提供 女性はアメリカ西海岸に住む黒人の大学生(23)。コスプレイヤーとしても活動し、SNS上で人気を集めていた。 女性が9月6日夜、「新世紀エヴァンゲリオン」の式波・アスカ・ラングレーのコスプレでダンスしている動画をTikTokに投稿したところ、コメント欄に日本人を自称する匿名アカウントが、英語で次のような主張を始めた。 「『カワイイカルチャー』は日本人のものだから、外国人が『カワイイ』という言葉を使ったら、文化の盗用だ。日本人を侮辱し、差別することになるから、『カワイイ』を使うな」 これをきっかけに批判や誹謗中傷するコメントが次々と書き込まれた。 「炎上」状態になっていることに女性が気づいたのは翌朝。大量の通知に驚いた。当時の心境をこう打ち明ける。 「日
■6歳で即位 ブルガリア王家は、英王家に直接つながる名家。本来なら恵まれた環境の下で帝王学を学ぶはずだった。「でも、時が来るのは早すぎた」。1943年に父ボリス3世が急死。シメオンはわずか6歳で即位した。「子どもの目にショックだったのは、周囲の人が昨日まで父に対して取った態度を突然、自分に対して取るようになったことです」 ソフィア郊外の宮殿=国末憲人撮影 第2次大戦末期、ソ連の支配下に入ったブルガリアは、46年に国民投票で王制を廃止し、人民共和国に移行。シメオンは9歳で退位を強いられた。 「ソ連軍が入ってきて、親戚や政治家たちが次々と処刑された。それを知らされた時の記憶は決して消えません」 以後ブルガリアは共産圏に。シメオンはエジプトを経てスペインに亡命し、成長して実業界で活躍した。 「私自身のみならず、私の子孫も、もう二度とブルガリアの地を踏むことはないと覚悟していました」 シメオン2世
2010年頃の話だが、ある台湾の大手部品メーカーを訪れた時の話だ。 「どうぞリラックスして、日本語でお話下さい」と、日本名が記された名刺を渡されたことがある。肩書きは技術担当の副総経理(副社長)と、相当な重職だ。 台湾では誰もが知るような有名上場企業なのに、なぜ日本人がこんな要職に就いているのか。 驚き戸惑いながら名刺交換し着席すると、程なくして董事長(会長:CEO)も入室し、人懐こい笑顔で語りかけてきた。 「ようこそ、はるか日本からよくお越し下さいました」 その日本語は淀みなく、発音を含めて全く違和感がない。そんな驚きが顔色に出ていたのか、董事長は自己紹介を兼ねて話し始めた。 「日本語は松下幸之助の著書で覚えました。翻訳本では彼の本当のメッセージがわからないので、原著を取り寄せ読んでいるうちに覚えたんです」 「正直、驚きました。しかし発音はどこで身につけられたのですか?日本に留学されてい
【関連記事】世界で急成長の日本アニメ、海外勢が猛追 輝き続けるカギは? 片渕監督の眼 【関連記事】なぜ日本アニメは世界で愛される ディズニーとは対極の「ガラパゴスの力」 ――日本のアニメには、見ている人が自分自身の人生と重ねて入り込める、共有できるストーリーが多いと、海外のアニメファンの多くが言っていた。だからこそ、国籍に関係なく、様々な国で受け入れられるのではないでしょうか。 えっとね、違うかもしれないんだけども、ある意味、日本のアニメーションがティーンエージャーより上の世代に向けて特化していった、対象年齢を特化していった結果だと思うんですよ。例えば、ピクサーなどはまだ子供のために見せるという使命が残っていますよね。日本はもうないですよ。 それはね、逆に言うと、そこが穴場なんです。「我々の世代に向けて語ってくれるメディアってない」と、ティーンエージャーや20代前半の人が思うわけです。とこ
東京オリンピックの開幕を控え、続々と各国選手団が東京・晴海にある選手村に入村している。しかし、組織的なドーピング違反のため、国家としての参加ができないロシア・オリンピック委員会(ROC)のチーム幹部から、選手村の状況について酷評される事態が露呈した。 ロシア国営メディアによると、同幹部は選手村の状況について「バスルームが狭い」「インターネットの接続環境が悪い」「アスリートが快適に過ごせる場所じゃない」と一方的に批判。 その上で、選手村は「まるで中世の時代にあるようだ。21世紀の日本ではない」と指摘し、改善を求めている。この動きに大会組織委員会も確認に乗り出した。 同メディアによると、ROCのフェンシングチームが19日に入村。ロシアフェンシング連盟の副会長で、代表チームの監督を務めるイリガル・マメドフ氏は選手村の実態に「私の選手たちが本当にかわいそうだ」として状況を訴えた。 マメドフ氏は19
【もう読みましたか?】「情報が筒抜けに」 海底ケーブルでも「中国排除」鮮明にしたアメリカ 米中対立の焦点になる理由 ――なぜ今、海底ケーブルが米中の覇権争いの場になったのですか。 国際通信の99%は海底ケーブルを通っている。残り1%が人工衛星経由だが、地上から衛星まで距離があり電波が行き来するのに時間がかかるので、海底ケーブルに頼らざるを得ない。米国は北米大陸にあるが、大西洋と太平洋に面した海洋国家だ。海底ケーブルがないと情報通信ができない。依存度合いが非常に高くなっており、非常に重要なインフラだという認識が米国で高まりつつある。 一方で、米国自身がやっていたことだが、海底ケーブルを監視することが非常に重要なセキュリティー上の課題になっていた。海底ケーブルを安全にしておくことが、安全保障の課題の一つとなった。この二つが理由だと思う。 海底ケーブルに詳しい土屋大洋・慶応義塾大教授=東京都中央
【関連記事】ラブドールの最高峰が挑む「不気味の谷」 ■「家族」の紹介 ブログから取材を申し込むとすぐに返事が来ました。「たくさん取材を受けてきたけど、日本のメディアからは初めて。もちろん歓迎するよ」と、うれしい内容です。 9月16日、成田からの直行便でデトロイト空港に飛び、ライドシェアの車を利用して北上すること40分ほど。2階建てのアパートの一室で、デイブキャットさん(45)は、所有する4体のドールを居間に並べて、待っていてくれました。 一緒に暮らすドールたちを居間に集合させてくれた=浜田陽太郎撮影 まずは、「奥さん」のシドレ。愛称はShi-chan(シーちゃん)です。友人に紹介されたアビス社のウェブサイトで出会って一目ぼれ、1年半かけて6000ドル(約70万円)をため2000年に一緒になりました。「お金をためるのに、時給の良い仕事を探して転職したんだ」。18年一緒に暮らす間に、「日本人の
――2007年に日本テレビ系番組「世界の果てまでイッテQ!」の珍獣ハンターに選ばれて以来、足を運んだのはこれまで実に100カ国以上。この10年、どんな変化を感じますか? 「誰もがスマホを持ってる状況になったな、と感じます。アフリカのマサイ族も、アマゾンの奥地に行っても、やっぱりスマホを持ってるんですよ。で、通じるんです。携帯で写真撮ったり、動画撮ったりもしてる。上半身裸で、テントのようなところで暮らしてるのにスマホを見ていたりするのは、すごいちぐはぐで不思議な感じがします。この10年は、そうした変化にびっくりしてますね」 「『イッテQ!』の撮影で行ったインドネシア・コモド島が人生で初めての海外だったんですが、当時の感覚は、今とはまったく違いますね。携帯電話もガラケーで、海外で使うこと自体が今のように普通じゃなくて、誰ともなかなか連絡が取れなくて、不安しかなかった記憶があります」 イモトアヤ
■圧力もうまく使うなら 日本のある大学に通う3年生の学生は、ブラジルの軍事政権期について学ぶうちに、軍事政権にも見習うべき点があると考えるようになったという。「軍事政権というと、軍部が市民に圧力をかけるイメージだったけど、ブラジルの場合は逆に、それによって平和と安全がもたらされたといわれています。圧力もうまく使えば、治安の安定につなげられるのではないかと考えました」 ブラジルでは軍事クーデターが起きた1964年以降、軍部が政治の中枢を握った。しかし、70年代前半までに「ブラジルの奇跡」と呼ばれる高度経済成長を実現。軍部が反対勢力を抑え込んで資源開発など重要な国家主導型プログラムを推進し、治安を安定させたことで海外企業の進出や融資を呼び込めたとされる。軍部が民間からテクノクラート(高度な専門知識と政策能力を持つ技術官僚)を重用したことも大きいといわれる。 【もっと知りたい】 「独裁」という新
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