『鬼滅の刃』という作品がこれほどの人気作となり、未曽有(みぞう)の記録を打ち立てているのはなぜなのか。様々な理由があるでしょうし、それは様々な専門家や評者、読者やファンが今後それぞれの角度から分析していくことだと思います。 私はここで、マンガの『鬼滅の刃』を一読者として正面から読みながら、自分なりにその秘密に迫ってみたいと考えています。ネチネチした進み方になるかもしれません。私が自分なりに言葉にしてみたいのは、『鬼滅の刃』という作品が、この世界の残酷さと理不尽さにいかに向き合っているかということ、自分の中にもひそんでいるかもしれない「鬼」の怖さをごまかしていないこと。にもかかわらず、この作品の主人公たちが人間の日々の努力や勇気の意味を、そして他人に対する強い信頼の心を見失っていないのはなぜかということです。そしてそれらすべてが、きっと若者や小学生たちの心にも届きえている――その意味について