38年前、京大卒の父が自死する。母は統一教会に入信し財産をほぼ寄附して、再三、韓国に渡るようになる。さらに1歳上の兄が難病で失明した。山上は奈良有数の進学校に通いながら、大学進学もままならず、入隊した海上自衛隊で自殺未遂。事情聴取に語ったのは、統一教会への恨みだった。銃撃事件を聞いた母は洩らした。「教義に反することは…」。 「ドーン!……ドーン!!」。7月8日、午前11時31分。憲政史上最長、通算8年8カ月にわたって日本を率いた元首相を2発の凶弾が襲った。終始不気味なほど冷静に、許されざる大罪を犯した容疑者は、一体何者なのか。 「あの子の母親は統一教会の催しで韓国に入り浸ってなかなか帰って来なかった。あの子は宗教にハマる母のことでずっと思い悩み、長いこと苦しめられてきたんですわ」 こう告白するのは傘寿が近づいても矍鑠(かくしゃく)とした様子の“暗殺犯”の父方の伯父、その人である。今回、事件