2011年の東日本大震災は、詩人と社会との関わりをめぐって、現代詩の世界に熱い論争を起こした。震災や原発事故という大災厄に向き合い、発信するべきか。距離を置き、言葉が熟するのを待つべきか。それぞれの主張の中心を担った藤井貞和と荒川洋治に話を聞いた。 ■藤井貞和(詩人) 記録して巨悪と対決 2011年3月の東日本大震災から5日目にツイッターで発信した福島の和合亮一さんを、私は応援したいと思った。神話が語る、原初的な無秩序の世界からことばが生まれてきた瞬間のように、和合さんの体を通してことばが生まれてきた。11年6月の詩集『詩ノ黙礼』は時代を超えて残ると思った。福島の若松丈太郎さんの作品も、読者に伝わる詩の意志、思いがある。 現代詩はいま全体的に低調で、荒川洋治さんも私も含めて行き詰まっている。その世界が動いていくことには意味がある。 福島で書かれる詩が震災や原発を離れることは難しい。福島の詩