日本の教育は、戦前は天皇絶対で軍国主義、戦後は日教組の影響で平和主義などと単純に整理されやすい。だがその実態は「近代化を推進するリベラルな理念」と「国体論にもとづく復古的理念」との絶えざる相克の歴史だった。 あの教育勅語さえ、保守派と開明派の妥協のなかで成立したものであり、その後も神聖不可侵のようでいて見直し論があったり、補完的な詔勅が出されたりしたほどなのだ。このことは専門家にとって常識でも、一般には十分に知られていなかった。 本書は、明治維新から現在まで約百五十年にわたる日本の教育史をこの相克を踏まえながら、天皇・天皇制との関わりを中心にまとめている。先行研究が豊富で、全体像が見渡しにくい分野だけに、こういう試みはありがたい。 著者は、御真影(天皇皇后の公式の肖像写真)の専門家なので、その扱いの変遷はとくに興味深い。御真影もはじめは軽く扱われていたものの、徐々に絶対に汚してはいけないも