『カフカとキルケゴール』 本書は、批判版カフカ全集やブロート・カフカ往復書簡集などの新資料を活用しつつ、カフカのキルケゴールに関するコメントを、彼が読んだシュレンプフ訳キルケゴール全集、『士師の書』、その他の二次的文献にさかのぼって解読する試みである。 キルケゴールに関するカフカの評言はきわめて難解であるが、それらをカフカの思惟全体の中に位置づけ、彼の人生問題と関連づけるならば、そこには、キルケゴールに対するカフカの驚くべき理解と解釈が浮かび上がってくる。 それと同時に、カフカのキルケゴール解釈にはブロートが深くかかわっていたことも判明するのであるが、それは、両者の関係について誤った観念を広めたブロート自身が予想もしなかったあり方によってなのである。 そして最後に、カフカがなぜ2度にわたってアフォリズム集を編集しようとしたのか、その謎も解明される。知的興奮を呼び覚ます画期的なカフカ論、キル