「アヴァンギャルド研究三部作」の第三巻である本書では、20世紀前衛芸術運動の具体的な展開を扱った『反逆する美学』(2008年)と『切断する美学』(2013年)とは異なり、その運動の背景となった社会思想の考察がおこなわれている。ベンヤミンや今村仁司、ボードリヤールを軸としながら、広義での「アヴァンギャルド」的なものの再検討が試みられているのである。本書で光があてられるのは、必ずしも前衛芸術運動に直接的な影響を与えた思想ばかりではない。それゆえ本書の試みは、現代思想に認められる「アヴァンギャルド」的なものの広がりを浮き彫りにしていると言えるだろう。それは、おおまかに言えば「新しさとは何か?」という問いに宛てられた思索の、蜘蛛の巣のようなつながりである。 フランスや日本、ときには両者の交流のなかで紡がれた思索をもとに本書が編み出すのは、とりわけ「新しさ」と死の親密な関係であるように思われる。日常