なぜロヒンギャは迫害されるのか。ヤンゴンで聞いても、多くのミャンマー人がロヒンギャを「バングラデシュから流入した不法移民で、ミャンマー国民ではない」と見ているようだった。タクシーの運転手は「子だくさんだから人口が増える」と「脅威」を語り、あるロヒンギャは「商売上手だから反感を持たれるのかもしれない」と分析した。 25年前からミャンマー(ビルマ)の人々の姿を記録してきたフォトジャーナリスト宇田有三は、ロヒンギャ問題は長く続いた軍事政権の「負の遺産」と指摘する。 軍が50年余り政治を支配したなかで、ロヒンギャだけでなく、あらゆる少数民族を差別した。政治参加や言論も統制された。「軍事政権が権力を掌握した恐怖や閉塞感から国民の不満をそらすため、ロヒンギャの問題は意図的に放置されてきた。政府に表立った批判が起きないのは、多くの人が今の経済発展にある程度満足しているからだろう」 反軍事政権で知られるミ