戦後日本経済の発展のなかで、これまで国内企業の合併・買収が活発化するという事態は見られなかった。しかし、1990年代後半から、日本におけるM&Aが急増し、戦後はじめてのブームを迎えている。件数ベースでみると、2004年にはM&Aは2000件を超え、10年前に比べて約4倍に増加した。では、なぜ1990年代半ば以降、国内企業間のM&Aを中心にM&Aは急速に増加したのか、こうしたM&Aの増加は、これまでのわが国のM&Aの展開や、国際的なM&Aの動向から見てどのような特徴をもつのか、そして、近年の増加するM&Aはいかなる経済的役割を演じているのか。本稿の課題は上記の一連の問いに一次的な解答を与える点にある。そのために本稿では、まずM&Aの経済的役割について、その二面性に注目した理論的整理を試みる。次にその視角から20世紀の日本企業の成長過程におけるM&Aの展開を概観し、戦前にはM&Aが企業の成長戦