先生:成瀬宇平/鎌倉女子大学名誉教授 医学博士。1935年福島県生まれ。大学では調理学全般を教えていたが、とくに魚については造詣が深い。『科学でわかる魚の目利き』『酒とつまみの科学』などの料理や食材に関する著書多数。 旬のサンマや秋ザケなど、脂ののった魚の塩焼きが美味しい季節である。塩焼きは塩をふって焼くだけという、まさにシンプル・イズ・ベストの料理。魚を焼く前に、魚に塩をふることを「ふり塩」というが、このふり塩、単に魚に塩味をつけるだけではないのをご存じだろうか。 ――ふり塩にはどんな狙いが? 先生 味付けの効果もありますが、そのほかにも3つほど効果があります。身に弾力が出てくる、旨味が増す、生臭さを抑える、です。それを1つずつご説明しましょう。 ふり塩をすると、塩の浸透圧の作用で塩分が魚の内部に入っていきます。魚の身は塩をふる前はほぐれやすい状態なのですが、塩の作用で魚の身のタンパ