仏教徒たちの国際交流 新幹線で広島駅を通過するとき、仏舎利塔(正式名称は「二葉山平和塔」)が目に入る。少年時代、あの麓(ふもと)を駆け回っていた私でさえ、なぜスリランカから仏陀の骨が寄進されたのか、その来歴に無頓着だった。しかし、その理由を本書で知ってしまった今、あの塔は何とまぶしく、そして哀(かな)しく見えることだろう。 近代仏教について、私はほとんど何も知らなかった。学校で習った仏教は主に江戸時代までの文化史だったが、明治の廃仏毀釈(はいぶつきしゃく)を最後に仏教は教科書からは消えた。それゆえ、本書が鮮やかに描き出す情熱的な仏教徒たちの国際交流の歴史には、目からウロコの連続である。 主要登場人物は、仏教復興を掲げて教育講談を興した野口復堂、神智学協会会長のオルコット大佐、「スリランカ建国の父」ダルマパーラである。明治二十一年、野口はオルコット招聘(しょうへい)のため渡印する。翌年ダルマ