「事業の継承本」をうたうものは数多いが,そのほとんどは経営を譲る側から書かれ,肝心の後継者の側に立った書籍は少ない─。コンサルティング会社のタナベ経営(大阪府吹田市)で専務取締役を務め,200社以上の企業再建に携わった著者はそう感じていた。ならば,自分で執筆してしまおうと考えたのが本書である。 著者は後継者問題に悩む多数の中小企業を見てきた経験から,うまく継承できない理由として,事業センスの欠如と,理論と現場のギャップを挙げる。事業の立ち上げに優れた創業者に対し,後継者は安定的な事業運営には秀でていても,受け継いだ事業が衰退する前に新たな事業の種をまいておくことが苦手だと指摘する。高学歴な後継者は目線が高く,現場がついていけないこともある。 こうした問題を解決するため,著者は後継者の思いを理解してくれる「後継スタッフ」の育成を重要なテーマに掲げる。理論には強いが現場感覚に乏しい後継者の弱点
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