JILPT招聘研究員 ハルトムート・ザイフェルト 戦後最悪ともいわれる経済危機において、ドイツ労働市場の状況は危機に見舞われた他国よりもはるかに深刻であった。こうした中で、短時間労働やフレックスタイムの積極的な利用が、ほとんど不可避と思われた雇用減少を緩和した。これはドイツの「雇用の奇跡」(注1)とも言われている。労働時間の推移は、ドイツにおける労働市場のフレキシビリティーと労働協約の規定が対立するものではないことをはっきりと証明した。多数の労働協約は、過去20年間、可変的な所定労働時間またはコリドールモデル、雇用保障契約(金属産業)や労働時間口座の利用を拡大してきた。商品・サービスの需要の低下に合わせて労働時間を調整するこれらの方法がなければ、2009年末までに100万人を超える雇用が失われていたであろう(注2)。 本稿では、ドイツにおけるこれまでの労働時間柔軟化の経緯を概観し、今回の経