将棋という一対一のゲームに対して、詰将棋という一人遊びのパズルがある。それと同じように、チェスというゲームに対して、チェスプロブレムというチェスの盤と駒を使ったパズルがある。そのプロブレムを作ったり解いたりして楽しむ、第五十五回のチェスプロブレム世界大会が、十五日から二十二日までの一週間、神戸のポートアイランドにある神戸商工会議所会館のホールを会場にして行われた。参加者は、海外から約百名、国内からは約四十名だった。 わたしは、詰将棋やプロブレムを創作する、いわゆる「作家」の側に身を置く者だが、半世紀近くになる作家歴で得た経験から言えば、作品を創作する手順は一つしかない。すなわち、こういうことが実現したらいいなあという、妄想ともつかぬ夢を思い描き、それが盤上に実現するように駒を配置するのである。実現の可能性が少なければ少ないほど、創作意欲は刺激される。そして、実現の可能性が理論的にゼロではな