日経ビジネス電子版で「『ア・ピース・オブ・警句』~世間に転がる意味不明」、日経ビジネス本誌では「『pie in the sky』~ 絵に描いた餅べーション」を連載中のコラムニスト、小田嶋隆さんが亡くなりました。65歳でした。 小田嶋さんには、日経ビジネス電子版の前身である日経ビジネスオンラインの黎明(れいめい)期から看板コラムニストとして、支えていただきました。追悼の意を込めて、2021年11月12日に掲載した「晩年は誰のものでもない」を再掲します。 時の権力者だけでなく、社会に対して舌鋒(ぜっぽう)鋭く切り込む真のコラムニスト。その小田嶋さんがつむぐ1万字近い原稿を、短い言葉でどう表現するか。記事タイトルを短時間で考える担当編集者にとっては、連載の公開前日は勝負の1日でもありました。 再掲載するコラムは療養中の病室から送っていただいた原稿です。「晩年」という言葉やそれを何も考えずに使う社
ロシアによるウクライナ侵攻で、国際的な緊張感が高まる中、「権威主義的」な色合いを強める中国に注目が集まっている。そんな母国に対し、中国に住む中国人や日本など国外に住む中国人は、本音ではどう思っているのか。 今回は、日経プレミアシリーズ『いま中国人は中国をこう見る』より、中国人が自国の愛国教育に対してどう思っているのかを紹介する。 習近平思想の教科書、その内容とは 2021年9月、新学期を迎えた中国の学校の一部で、習近平思想の授業が開始された。これまでも毛沢東思想や鄧小平理論など、歴代指導者の政治理念が党の憲法である規約に記されたことがあり、習主席の思想も同様だ。「習近平思想」について書かれた教科書を使う目的は、文字通り、若者たちに習主席の思想を浸透させることにある。 中国のサイトで小学生向けの教科書を見ると、正式には「習近平新時代中国特色社会主義思想学生読本」(習近平の新時代の中国の特色あ
国立大学法人が「稼げる大学」になることを求められている。そのための先兵とも言えるのが東大や京大、阪大、東北大がそれぞれ出資する認定ベンチャーキャピタル(VC)だ。しかし、認定VCは多くの課題に直面しているのが現実だ。 国立大学法人の「事業化」の動きが進んでいる。世界と比較して相対的に低下している研究力や資金力を確保するのが目的だ。国は10兆円規模の「大学ファンド」の創設を打ち出しており、運用益をいくつかの大学に配分する計画を立てている。運用益配分の1つの条件は継続的な事業成長になるとみられる。2022年4月からはすべての国立大学法人が民間ファンドに出資する形で大学発ベンチャーに投資できるようになる。
米アップルのスマートフォン「iPhone」の発売日にはアップルストア前に長蛇の列ができるのが、日本でも恒例だ。だが、今年9月24日のiPhone 13発売日は、新型コロナウイルス対策のため来店が予約制となったことで、行列はほとんど見られなかった。 しかし、行列が鳴りを潜めた理由はコロナ禍だけではない。調査会社のBCN(東京・千代田)が家電量販店などの販売データを基に集計した販売台数ランキングによると、10月に入り最新のiPhone 13シリーズ(最安のiPhone 13 miniで8万6800円から)の販売数減速が目立つ。 代わりに台頭するのが廉価版のiPhone SE(第2世代、4万9800円から)だ。iPhone全体に占める販売割合は約4割だという。
決済事業者はユーザー獲得などに費やした先行投資を回収する必要があるが、「有料になるならやめる」(中小小売店の関係者)との声が漏れる。加盟店を引き留められるのだろうか。 決済手数料とは、電子マネーやクレジットカード、スマホ決済サービスを提供する事業者が、導入した加盟店から得る手数料だ。 例えば、Suicaなど交通系電子マネーは3.25%(米Squareの場合)、楽天ペイは3.24%。今年有料化を予定するLINE Payは10月から2.45%、メルペイは7月から2.6%となる。PayPayは10月に有料化を検討し、料率は未定としている。 クレジットカードは導入店舗ごとに与信を判断するため、1~6%程度と幅がある。経済産業省が18年4月にまとめた「キャッシュレス・ビジョン」によれば、中央値は3.00%となっている。 19年の消費増税に伴う「キャッシュレス決済・ポイント還元事業」では、キャッシュレ
認知症を患う母にどうしても会っておきたくて、ゴールデンウイークの休暇を利用して米ニューヨークから実家のある千葉市に一時帰国した。 帰国する飛行機の出発前72時間以内のCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)検査の陰性結果に加え、ワクチン接種の証明書を携えての帰国。到着した成田国際空港での唾液による検査でも陰性と出た。それでも日本への渡航者全員には到着翌日から14日間の自主隔離が求められる。 帰国者側からすると「検査をしていない日本在住者に比べてむしろ安全なのでは?」と感じるのも本音。だが一方で、東京五輪・パラリンピックを約2カ月後に控える日本政府の意気込みも感じられ、当然ながらすべての要請に従う前提で帰国を決断した。 ところが成田到着直後から筆者に突きつけられたのは「穴だらけの水際対策」という現実だった。 帰国者への水際対策はニューヨークの空港(実際には近郊のニュージャージー州ニューア
ディエゴ・マラドーナが死んでしまった。 多少ともサッカーに関わりを持ったことのある人間は、誰もが落胆していると思う。私も同じだ。朝方に第一報を知って以来、茫然としている。 本来なら、今回はマラドーナ追悼のためのテキストを書くべきなのだろう。 ただ、私は、読者を納得させるに足る文章を書く自信を持てない。たぶん、マラドーナについて私が書くテキストは、ひどく個人的な話になる。その個人的な話が普遍性を持っているのなら良いのだが、おそらくそういうことにはならない。私の個人的なマラドーナ追想譚は、うっかりすると、少なからぬ人々の反発を買う。でなくても、ネット上のメディアで万人が共有できるような心あたたまるエピソードには着地しないだろう。むしろ、炎上するはずだ。大好きな人間に向けた最も率直な言葉は、ネットにぶら下がっているそれぞれに鈍感だったり粗雑だったりする野次馬の心にはどうせ届かない。だとしたら、沼
書こうか書くまいか散々悩んだ結果、やはり書こうと思う。 なぜ、悩んだのか? 一つには、何から書いていいか分からないほど、「絶望」に近い感情を抱いたこと。そして、もう一つは、どうしたら伝えたいことが伝わるか、最善の方法が見つからなかったからだ。 が、今書いておかないと後悔しそうなので、書きます。 テーマは「人さまに迷惑をかけるな!」といったところだろうか。 まずは、遡ること14年前に起きた、忘れることのできない“ある事件”からお話しする。 2006年2月1日、京都市伏見区の河川敷で、認知症を患う母親(当時86歳)を1人で介護していた男性(当時54歳)が、母親の首を絞めて殺害した。自分も包丁で首を切り、自殺を図ったが、通行人に発見され、未遂に終わった。 男性は両親と3人で暮らしていたが、1995年に父親が他界。その頃から、母親に認知症の症状があらわれはじめる。一方、男性は98年にリストラで仕事
多くのアジア系移民が米国で成功を収めてきた。統計的にもアジア系移民は他の人種グループより高い教育を受け、より豊かな傾向があるという。だが依然として、東アジア系が米国の組織のリーダーとして注目される事例は極めてまれだ。とりわけ大企業や大学では、アジア系の中ではインド出身の人物がトップに出世しているケースが目に付くが、東アジアの日本・中国・韓国出身者は存在感がない。中国出身である米マサチューセッツ工科大学(MIT)のジャクソン・ルー助教授が慎重に分析したところ、いわゆる「差別」や「格差」とは違ったところに、大きな要因があったという。5カ国語を話すというルー助教授に、日本語で聞いた。 ルーさん、今日は日本語での対応をありがとうございます。中国出身ですね。 ジャクソン・ルー米マサチューセッツ工科大学(MIT)助教授(以下、ルー):はい、実は学生時代に日本語を専攻し、早稲田大学に留学したことがあるの
新型コロナウイルス感染拡大への対応が他の国々と比べればうまくいっていると評価されることが多い国・地域を3つ挙げるなら、台湾、韓国、ドイツだろう。それぞれの経緯についてまとめてみた。 (1)台湾 台湾の人口は約2360万人(2020年2月時点)だが、新型コロナウイルス感染者数は393人、死亡者数が6人にとどまっている(4月14日 衛生福利部疾病管制署発表)。政府の巧妙な対処によってウイルスの封じ込めに成功している。4月14日と4月16日は新たな感染者が1人も確認されなかった。 功労者の1人は16年にデジタル担当の政務委員(大臣)に起用された天才ホワイトハッカー、オードリー・タン(唐鳳)氏である。この人物は、マスクの在庫データを管理するアプリを活用し、どの店にどのくらい在庫があるのかを市民が常に把握できる状況をつくり上げた。 これにより、買い占めなどの混乱を防ぐために政府がマスク全量を買い上げ
政府は新型コロナウイルスによる肺炎が拡大する中国湖北省武漢市に残された日本人退避のため、28日夜に民間チャーター機1機を派遣する方向で最終調整に入った。厚生労働省は「人権侵害に当たり、法的にも権限がない」として、退避した日本人の強制的な隔離をせず、自主的な医療施設の検診を呼びかける方針だ。 過去に、政府が民間チャーター機を使って在外邦人の帰国を支援したのは、2002年6月のインド・パキスタン情勢の激化や1998年5月にインドネシアのジャカルタで発生した暴動など、政治情勢の悪化が多い。外務省海外邦人安全課は「全ての記録を見直したわけではないが、感染症による退避支援は恐らく初めてだ」としている。 厚労省は28日、同チャーター機に医師1人、看護師2人、検疫官1人を同乗させることを決めた。日本からチャーター機に乗り、退避する日本人に対して復路の機内で診察や検疫を実施する。高熱などで移動が困難と医師
今回は、「桜を見る会」の話をするつもりでいる。 このあまりにもベタで生煮えな話題を、あえていま騒動の渦中にあるタイミングでまな板に載せることにした理由は、私自身が「桜を見る会」まわりの問題を重視しているからというよりは、いまのうちに取り上げておかないと、来週の今頃にはすっかり風化しているだろうと考えたからだ。 桜は満開から3日後には早くも散り始める。この種の話題は、風化が早い。 そう判断したからこそ、官邸は中止の決断を急いだのだろう。 「なあに、さっさとテントを畳んで撤収すれば、じきにいつまでも跡地で騒いでいる連中の方が間抜けに見えるようになる」 という判断だ。 そして、その彼らの判断は、おそらく間違っていない。 メディアは3日で飽きるだろうし、野党が粘ったところで国民の関心はどうせ1週間ももたない。われわれは匙を投げるだろう。 「やめるって言ってるんだからもういいじゃないか」 と、そうい
2021年に90万人下回ると予想されていた日本の出生数が、2年前倒しで90万人割れとなる見込みが濃厚となった。厚生労働省がこのほど発表した人口動態統計の速報値によれば、2019年1月から7月の出生数は前年同期比5.9%減の51万8590人で、今年の出生数が90万人割れするのはほぼ確実となったからだ。国立社会保障・人口問題研究所は17年、19年の出生数は92万1000人で、90万人割れするのは21年(88.6万人)とする推計を出していた。 想定より早いペースで少子化が進んでいることに対しては、団塊ジュニア世代(1971~74年)の高齢化が進み、出産適齢期でなくなったことや、20代の女性が578万人、30代の女性が696万人と、出産期の女性の数自体が減っていることが主な理由に挙げられる。しかし、こうした人口動態の変化は、17年時点である程度把握できていたはずだ。なぜ狂いが生じたのか。 問題を見
政府は12月18日に新たな防衛大綱を閣議決定。ヘリ搭載の「いずも」型護衛艦に、戦闘機「F-35B」を搭載できるようにして、事実上の空母とすることを明記しました。F-35Bは短い滑走で離陸し垂直着陸できる特徴(STOVL)を持ちます 。 道下徳成(みちした・なるしげ)氏 政策研究大学院大学教授(安全保障・国際問題プログラム ディレクター)。 専門は日本の防衛・外交政策、朝鮮半島の安全保障。 著書に『北朝鮮 瀬戸際外交の歴史、1966~2012年』(ミネルヴァ書房、2013年)がある。米国ジョンズ・ホプキンス大学博士(写真:菊池くらげ) 第1の本格的な紛争において想定できるのは、例えば太平洋上で海上自衛隊が対潜水艦戦を実施する際に艦隊の防空をするケースです。イージス艦だけでは防空できる範囲が限られていますが、空母があれば防空できる範囲が広がります。 冷戦期には北海道周辺の海空域における攻防が焦
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