観阿弥の能『自然居士』には中世日本の人身売買が描かれている。*写真はイメージです REUTERS/Toru Hanai 中世の日本には「奴隷」がいた。明治大学商学部の清水克行教授は「わが国では古代以来、原則的に人身売買は国禁とされていたが、現実には大飢饉が起こるたびに人身売買が横行した。そうした下人は、非人間的な『奴隷』としての扱いだった」という――。 能「自然居士」で描かれた"身売り少女"の悲劇 世阿弥(1363?~1443?)の父、観阿弥(1333~1384)が作ったとされる能で、『自然居士(じねんこじ)』という作品がある。 主人公の自然居士は、鎌倉時代の京都に実在した半僧半俗の説経師。彼の説法は庶民にもわかりやすい解説とパフォーマンスで知られ、彼が登壇する説法会はいつもファンで超満員だった。いわば当時のカリスマ・タレントである。 ある日、京都東山の雲居(うんご)寺というお寺での出来事