初期大和政権の大王墓とみられ、国内最多の81面分の銅鏡が発見された桜井茶臼山古墳(奈良県桜井市)の調査成果が、考古学界に思わぬ波紋を広げている。これまで“最高級の鏡”として君臨してきた三角縁神獣鏡が実はBクラス向けで、逆に注目度の低かった国産の大型内行花文鏡に脚光を当てる説が浮上したからだ。出土枚数や技術面がその根拠となっているが、果たして三角縁神獣鏡は、主役の座を明け渡すのか−。(小畑三秋、川西健士郎) 権威の象徴にあらず? 「古墳研究は、三角縁神獣鏡をピラミッドの頂点として進んできたが、最も重要な鏡は国産の大型内行花文鏡。発掘成果は、学界を二分する議論を起こすだろう」。調査を行った奈良県立橿原考古学研究所の菅谷文則所長はそう言い切る。 古代の鏡は姿見用ではなく、権力者の権威の象徴だった。故に鏡は「古墳研究の華」ととらえられ、中でも、不老不死を願う中国の思想をモチーフに、神を精巧に表現