注)この文章は「黒澤明 映画祭 2000~2001 パンフレット」2000年11月22日発行(ラピュタ阿佐ヶ谷)に掲載されたものです。執筆に当たっては編集部より、黒澤明監督と宮崎駿監督の共通項や差異について考察して欲しいという要請があり、これを踏まえて書かれた原稿です。 ●「七人の侍」の呪縛 アニメーション監督・宮崎駿氏は、九三年四月八日に黒澤明監督と対談を行っている。テレビ番組の企画で、場所は御殿場の黒澤別邸。対談の模様は『何が映画か―「七人の侍」と「まぁだだよ」をめぐって』という一冊の本にまとめられている。驚くべきことに、二人が語り合った内容は、ほとんどが小道具や撮影技術に関する細々とした話題である。 宮崎監督は、対談後のインタビューで、黒澤監督が巨匠然と構えず、常に細部に気を配っていたことが嬉しかったと語っている。自分が「面白い」と思った小道具はほとんど黒澤監督自らが判断して採用され