「そ、そんな馬鹿な……」 梅田議員は青ざめた顔で鏡を見つめていた。 2019年、日本でとある怪現象が起きた。二十歳以上の男性の半数が突然、妊娠・出産できる身体になったのだ。 原因不明のこの怪現象に、政府や医療機関は対応に追われた。女性はもちろん、自分たちの子供を作れることになって喜ぶ同性カップルの姿や、結婚はしたくないけれど自分の遺伝子を持つ子供は欲しい男性、子供を産む苦労を妻に担わせたくない男性など、この状況を素直に受け入れる国民もいた。 この件について与党議員である梅田は「三人以上は産んでほしいですな!」と叫び、子を生み育てるハードルが高い日本の現状を無視した発言に非難が集中することになる。 この怪現象にはとある特徴があった。孕むことができるようになった男達は皆、身体の一部に『やればできる』という言葉が消えないアザとなって浮かび上がるのだ。 その部位とは背中、肩、足、胸元と人それぞれで