大阪市平野区で平成14年に起きた母子殺害放火事件は、14日で発生から丸10年を迎えた。事件をめぐっては殺人などの罪に問われた森健充(たけみつ)被告(54)にいったんは死刑が言い渡されたが、最高裁による審理差し戻しを経て先月15日、無罪が言い渡された。「これでは一区切りなんかつかない」。司法に翻弄されながらただ過ぎ去った10年の歳月を、被害者遺族はこう振り返った。 「2人も殺されているのに、誰も罪を償わないなんて。泣き寝入りするしかないの?」 犠牲になった森まゆみさん=当時(28)=の母、明石隆子さん(62)は、夫婦2人きりで暮らす自宅でつぶやいた。父の数男さん(63)は「もう判決は覆らんのとちゃうか。無罪になった人がもう一度死刑になるなんて大事(おおごと)や」とため息をつく。 遺影が飾られた自宅には今も、愛娘(まなむすめ)と初孫との思い出が詰まった品々が捨てられずにとってある。大きなクマの