社会に関わり、人々の生活に分け入っていこうとするアートの動きが高まっています。その歴史は、意外にも百年以上前のイタリア・未来派の活動までさかのぼることができるものでした。現在の「参加型アート」「ソーシャリー・エンゲイジド・アート」と呼ばれる動向はどのようにして生まれ、そこにはどんな問題が横たわっているのでしょうか?クレア・ビショップ『人工地獄』をめぐって、アーティスト田中功起さんと、訳者の大森俊克さんに、社会に関わるアートについて幅広く語っていただきました。 「参加するアート」の歴史を考える 田中:まずは大森さんをねぎらいたいですね。おつかれさまでした。『人工地獄』の原書『Artificial Hells』は2012年刊行だったわけだから、このスピードで邦訳が出たことは驚きです。僕自身は1章の『社会的転回』や、タニア・ブルゲラやパヴェウ・アルトハメルを扱った教育についての9章など、いくつか