小学館版「日本美術全集」の第19巻、「拡張する戦後美術」が刊行された。編者は椹木野衣。『日本・現代・美術』の著者による編集であるから、初めから常識的な通史となるはずがなかったとはいえ、予想をはるかに超える過激な内容である。図版が掲載された作家のうち、岡本太郎、草間彌生、杉本博司であれば理解することは困難ではない。しかし例えば次のような「作家」を私たちはどのようにとらえればよいか。山下清、三松正夫、山本作兵衛、杉山寧、ジョージ秋山、糸井貫二、牧野邦夫、神田日勝。おそらく私も含めて初めて目にする名前がいくつかあるはずだ。そしてこれまで知っていたとしても美術の文脈から排除されてきた「作家」の名も多い。彼らを果たして一つの文脈に組み込むことが可能であるかという点が本書の賭け金だ。本書には椹木以外にも総論として山下裕二、コラムとして四本の論文が掲載されている。しかし私の見るところ、福住廉の「肉体絵画