2月23日の土曜日には、IAMAS(情報科学芸術大学院大学)の卒業制作展を観に行き、その催しのひとつであるトークイベント「これからの科学と芸術」を聴講した。同校教授の作曲家三輪眞弘さんと、物理学者の池上高志さん(東京大学)、明和電機の土佐信道さんをゲストに迎えた鼎談である。 前半は3人それぞれの活動紹介と、芸術観の違いなどが話し合われたが、このトークイベントで唯一論争に近いところまで発展しかかったのは、後半3分の1くらいにおける、主として池上さんと三輪さんとの間でとり交わされた議論であった。争点の中心をぼくなりにパラフレーズすると、ようするに宇宙における「人間」の地位をめぐるものである。 三輪さんが2000年以来追求してきた「逆シミュレーション音楽」では、完全に規則に従った機械(コンピュータ)の動作を、人間のパフォーマーが演じることになる。規則(楽譜)自体が音楽作品なのではなく、それを人間