核やミサイル開発で、毎日のようにニュースを騒がせている、北朝鮮。しかし、北朝鮮の脅威はすでに、あなたの隣に迫っているかもしれない……。日本にも数多く潜伏しているとされる北朝鮮の工作員たち。彼らはいったい何者で、どんな生活を送っているのか。元工作員たちへのインタビューを重ねてきた報道記者・作家で『スリーパー 浸透工作員』の著者でもある竹内明氏が、自らの目で見、直接話を聞いた、彼らの実像を語ります。 工作員の「浸透」と「復帰」 北朝鮮の元工作員である金東植(キム・ドンシク)氏は、彼らがどのようにして対象国を出入りしているのかを、生々しく語ってくれた。工作員たちが対象国に潜入し、その社会に溶け込むことを「浸透」、母国・北朝鮮に帰国することを「復帰」と呼ぶ。ここではまず、金元工作員が語った、極秘出国当日の様子を描いてみよう。 ……夜、11時。土を盛っただけの墓地の茂みの中に、金東植は潜んでいた。月