タグ

ブックマーク / lost2decades.blogspot.com (5)

  • 「デフレについての誤解」の誤解

    池田信夫氏が「デフレについての誤解」という題名でデフレについて書かれている。率直に言えば、氏が指摘している4点は新たな誤解を招きかねないものだ。取り急ぎ、議論を敷衍しながら、「デフレについての誤解」の誤解について論じることにしよう。 1.デフレが不況の原因である。 まず確認しておく必要があるのは、池田氏が言うように、デフレと不況とは同義語ではないということだ。IMFや内閣府におけるデフレの定義は、「2年以上継続して物価が下がっている状況」である。この定義からわかるのは、デフレは定義上、景気の悪化を含んだ概念ではないということだ。 勿論、デフレは実質ベースの経済指標を上昇させることで経済に悪影響を及ぼす。名目賃金が下方硬直的であれば、デフレの進展は実質賃金の高止まりを生み、名目利子率がゼロ近傍であったとしてもデフレにより実質利子率は上昇するため、企業の投資は手控えられる。2002年以降の景気

  • 菅首相就任会見雑感

    日夕方、菅首相は就任にあたり記者会見を行った。マニフェストと現実との狭間で、やるべき事とやるべきでない事、出来る事と出来ない事の区別すらつかず、政策実行に必要な調整や周囲の補佐を欠いて自滅した鳩山政権の事はもう言うまい。昨年8月に政権を奪取した民主党にとっても、日経済にとってもまさに正念場である。菅首相は国民の期待に応えることができるのか、果たしてそうでないのか。 会見では、まず菅首相自らの認識が語られる。曰く、政治の役割は最小不幸の社会をつくることである。曰く、「失われた20年」の経済停滞、社会の閉塞感を脱し日を元気の良い国にするために、日経済・財政・社会保障を立て直す必要がある。そして、この停滞の背景には20年間の政治のリーダーシップのなさがあるという。 私も首相の指摘する認識には同意見だ。経済成長は政府が行うものではない。しかしバブル崩壊以降の長期停滞には、適切な政策が早期に

  • 「ケインズの経済学」とは何か?(その1)

    様々な経済関係の論文・論説・書籍・公表データから感じたことを気軽にメモ風に纏めるブログ。リンク等は御自由に。 現実経済は貨幣経済であり、我が国の長期停滞を考える場合に貨幣的現象が大きく影響しているのであれば、貨幣経済に正面から取り組んだケインズ自身の著作を再検討することが必要だろう。そして「ケインズの経済学」以後のマクロ経済学の潮流は、一般均衡理論の中における「貨幣」の位置づけを巡って展開しているようにも思われるのである。New KeynesianモデルがRBCモデルに硬直性を付加したものという見方は、まさに以下で見るケインジアンの反革命が繰り返し現れていると見ることもできるのではないだろうか。 以下では、小手調べに花輪俊哉監修『ケインズ経済学の再評価』の中から花輪俊哉氏による簡潔なまとめ(序:ケインズ経済学の再評価をめぐって)の印象に残った部分を纏めてみることにしよう。 1.異端の書『一

  • 田中秀臣『デフレ不況 日本銀行の大罪』を読む

    様々な経済関係の論文・論説・書籍・公表データから感じたことを気軽にメモ風に纏めるブログ。リンク等は御自由に。 我が国がデフレに陥って早10年が経過した。「失われた20年」とも呼ばれる長期停滞に、このデフレが大きな影響を及ぼしていることは言を待たないだろう。書は、デフレに最も大きな影響を与える金融政策、日銀行について論じた書籍である。 まず一読して感じたのは、「デフレ」という現象と「デフレ」に決定的に影響を与える日銀行について様々な視点から論じられていることだ。 第一章は「日銀理論」について手厳しい批判がなされる。デフレに最も影響を及ぼすのが日銀行の金融政策であるにも関わらず、現下のデフレに責任が全く無いと主張する総裁、経済危機やデフレに関する当事者意識のなさ、政府によるデフレ宣言以降の迷走、必要以上にバブルを懸念する政策スタンス、イエスマンが横行する組織、といった特徴が指摘される。

    田中秀臣『デフレ不況 日本銀行の大罪』を読む
  • 量的緩和は実体経済指標を統計的に有意に刺激する 量的金融緩和無効論の批判的検討「特集 デフレ日本の財政金融政策」(週刊金融財政事情2010/03/29号)

    様々な経済関係の論文・論説・書籍・公表データから感じたことを気軽にメモ風に纏めるブログ。リンク等は御自由に。 『週刊金融財政事情』の特集は「デフレ日の財政金融政策」ということで、高橋洋一、松岡幹裕、河野龍太郎の三氏が寄稿している。個人的にはこの三つの論考の中で重要だと感じるのは松岡氏による量的緩和政策の評価である。この論考を中心にまとめてみよう。 さて松岡氏の論考は、表題にも掲げた通り、量的金融緩和無効論に対する批判的検討である。この論考のベースは、浜田・原田編『長期不況の理論と実証 日経済の停滞と金融政策』第二章所収の同氏の論文(日銀理論とは何か:名目短期金利ゼロの下限と金融政策)(同種の論文はESRI DP No.29としても読める)と思われるが、量的金融緩和策無効論についての批判的な検討がなされている。 松岡氏による、量的金融緩和無効論の主張を取り上げてみよう。論説では7つ全ての

  • 1