当記事は、第6回プライマリ・ケア連合学会学術大会 「シンポジウム10」 として開催された「生命の危機に直面した患者・家族と“いのちの終わり”に関する話し合いを始める」の口演をもとに作成しています。 [意思決定の根拠] 肺炎を発症した88歳の外来患者。「もういやだ、家に帰る」とどなっています。さて、医療者としての判断はいかにすべきなのでしょうか。帰宅させるべきなのでしょうか、それとも鎮静をかけて入院させるべきなのでしょうか。 意思決定の根拠にどのような重みを置くのか、すなわち意思決定の原理はとは何なのでしょうか。そして倫理的に考えるということとはどういうことでしょうか。意思決定の判断において、「良いこと」、「悪いこと」という2元的分類を、私たちは無意識的に行っています。良いこと、悪いこと、そう判断した根拠とは何でしょうか。直観的に良いこと、悪いこと、ではなく、その背景に何があって「良い」、「