このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。 X: @shiropen2 網膜の中心部にある黄斑に穴が開く「黄斑円孔」という病気がある。これは主に高齢者や女性に多く見られ、中心視力の低下やゆがみを引き起こす。これは加齢とともに、眼球内の「硝子体」と呼ばれる透明なゲル状の液体が厚くなり、網膜を引っ張ることで組織に穴が開くことが原因とされている。 9割の患者は従来の手術で治癒するが、難治性の場合には、網膜の一部を他の部位からを切りとって移植することで穴をふさぐ治療が一つの方法として近年行われている。成功率は高いものの、手術操作が煩雑で危険を共ない、また網膜を切りとった部分が見えなくなってしまう問題がある。 この課題に取り組むため