侮辱罪を厳罰化する改正刑法が成立した。インターネット上の誹謗(ひぼう)中傷対策で、罰則に懲役や罰金が新たに加わった。 厳罰化が抑止効果につながることを期待し、自民、公明、日本維新の会や国民民主党は賛成したが、立憲民主党や共産党は反対した。 憲法が保障する表現の自由が制約され、政治家らへの正当な批判を萎縮させる恐れがあるのだという。随分とおかしな議論ではないか。 新聞、テレビの報道から個人のSNSまで、政権への批判は満ちあふれているが、これらが侮辱罪の適用対象として検討された例を寡聞にして知らない。報道の側の自粛傾向を問題視する声もあるが、日本の報道はそれほど柔(やわ)なのか。そうではあるまい。 憲法が保障する「出版その他一切の表現の自由」は、その範囲を「公共の福祉に反しない限り」としており、無制限に野放しを認めたものではない。 国会の法改正による刑罰の設定はいわば国家の意志だ。侮辱罪の厳罰