建築と不動産のあいだを追究する大学時代は岸和郎氏に師事。卒業後は設計事務所に就職し、設計監理のチーフを約8年務めた。いずれ建築家として独立する、それが夢だった。 不動産会社に転職したのも独立資金を貯めるため。もっとも高橋氏自身は「清水の舞台から飛び下りる覚悟」だったという。かつての仲間たちに「建築をあきらめるのか」と批判されるのではないかと怖かった。 「淡い期待もありました。設計事務所にいた頃、デベロッパーからマンション設計の依頼を受けてもさっぱりわけがわからない。『建築家は〝いい建築〞をつくってナンボ』と思っていたんですね(笑)。でも、その〝さっぱり〞の謎が、不動産会社にいったら解けるかも、と」 不動産会社では、建築と不動産の違いを痛感した。不動産業界は「建築のことを何もわかってない」。だが建築業界は「顧客に対する理解の幅」で不動産業界に劣って見えた。 「土地と建物、お客さまからしたら一