家族の絆は大切なので、永遠のものだとか、昔から変わらないと思いがちだが、それは願望でしかない。歴史は、家族の形が流転してきたことを示しており、これからも繰り返されるであろうことを教えている。筒井淳也先生の『結婚と家族のこれから』は、世間的な思い込みを排すべく、家族が歴史的にどう変化してきたかを説き起こすところから始めている。価値観をぶつけ合うだけに終始する家族論から脱するために、とても有用なテキストになると思う。 ……… 「愛こそすべて」と思う方には、下世話に聞こえるかもしれないが、家族の形は、「食べていくこと」に大きく左右されてきた。高度成長期の皆婚社会は、食べさせられる多くの男性労働者が居て、結婚以外では女性が未だ生きにくい環境が生み出したものである。これが1997年のハシモトデフレ以降は、失業の増大と非正規化によって変質し、晩婚化と非婚化が進み、極端な少子化に陥った。 家族の形をどう