私はこの講演の中で、「あなた方が、ほんとうに、母国のことばの発音で読まれたいと思ったら、カンジを使ってはいけません。朝鮮人に日本語を学ぶギリがないと同様に、日本人にも朝鮮語や朝鮮でのカンジの読み方を学ばなければならぬという理由はありません。日本人に、朝鮮人の名前をその発音通りに読ませるためには、あなたがたはカンジをやめてカタカナだけで名前を書いてください」と言ったところ、まあたとえてみれば、私は「袋叩き」のような状態になってしまった。中にお腹の大きな女性がいて、その人は演壇上の私をキッと見据えて、「私はこのお腹の中の子に、立派なカンジの名前をつけてやります」と言ったものだ。私はあまりのキハクにちょっとこわくなって、そそくさと壇をおりた。司会者のチォエさんが、「田中さんは、決して悪い考えで言われたのではないのです。わたしたちの味方です」ととりなしてくれたが、会場はおさまらなかった。