★★★☆☆ (評者)池田信夫 完全なる証明 著者:マーシャ・ガッセン 販売元:文藝春秋 発売日:2009-11-12 クチコミを見る 大学というのは、世間では学問に専念する純粋な人々の集まる世界と思われているかもしれないが、実際にはきわめて俗っぽい世界だ。日本の大学は、准教授になった段階で事実上のテニュア(終身雇用)がえられ、授業さえこなしていれば何もしなくてもいいので、ほとんどの研究者はその段階で研究をしなくなる。これに対して欧米諸国、特にアメリカの一流大学の研究者の競争は激烈だ。教授になってもテニュアは簡単に取れず、業績が上がらないと他の大学へ転出するよう圧力をかけられる。国際学会の権威ある査読つき論文以外は、業績とはみなされない。 ところが2002年に、arXivというコーネル大学のウェブサイトにディスカッション・ペーパーが投稿された。著者はグリーシャ・ペレルマンという、どこの大学に