本連載では、この夏まで米ビジネススクールで助教授を務めていた筆者が、欧米を中心とした海外の経営学の知見を紹介していきます。 さて、最近日本でよく聞かれるのが「ダイバーシティ経営」という言葉です。ダイバーシティとは「人の多様性」のことで、ダイバーシティ経営とは「女性・外国人などを積極的に登用することで、組織の活性化・企業価値の向上をはかる」という意味で使われるようです(参考)。実際、女性・外国人を積極的に登用する企業は今注目されていますし、安倍晋三首相もこの風潮を後押ししているようです。 ところが、実は世界の経営学では、上記とまったく逆の主張がされています。すなわち「性別・国籍などを多様化することは、組織のパフォーマンス向上に良い影響を及ぼさないばかりか、マイナスの影響を与えることもある」という研究結果が得られているのです。 なぜ「ダイバーシティー経営」は組織にマイナスなのでしょうか。何が問
「コーポレート・ガバナンス、税制改革、株式の持ち合いの解消、規制緩和について、真剣に検討をしていく必要があると思います」 12月上旬に日本を訪れたゲアハルト・シュレーダー前首相は、月刊誌FACTAが主催し、日本経済新聞社が後援したシンポジウムで、アベノミクスの構造改革への期待を語った。 アジェンダ2010で欧州の病人が復活 1998年から2005年まで首相を務めたシュレーダー氏は、2003年、大胆な構造改革策を打ち出した。その結果、「欧州の病人」と呼ばれていたドイツ経済が、今日では欧州最強となる基盤を築いたのだ。シュレーダー改革は痛みを伴う改革だったため、2005年の選挙で敗北、首相の座を追われたが、その成果はアンゲラ・メルケル現首相時代に花開き、強いドイツ企業が復活。失業率は大幅に低下し、給与も増えた。 シュレーダー改革の柱は「アジェンダ2010」と名付けられた政策パッケージで、雇用制度
消費者や顧客が自分の商品やブランドについてどう関わっているか、どう感じているかを知ることは、マーケティング戦略策定の基本だ。これまでは消費者へのアンケート調査によるマーケティングリサーチや、不満や意見を企業に直接伝えたい顧客に対応するコールセンターなどがその役割を果たしてきた。 しかし今やオンライン上には、あなたの商品やブランドについて友人と感想を語り合い、最良の(あるいは最悪の)経験を話している多くの消費者や顧客がいる。そこには企業側が想像もしなかったような行動や感情も表れる。「ソーシャルリスニング」はそのような顧客の行動と気持ちをリアルタイムに把握し、深く理解し、商品やサービスの改善から新しいアイデアの創出に活用できる強力な手段である。
ユーロ圏を覆う冷たい暗闇の中に、ほのかな明かりが見えてきたようである。想定外の突発事態が起こらなければ、今月、欧州連合(EU)の「ユーロ危機・集中治療室」を離れる患者が初めて現われる。 アイルランドとスペインが救済プログラム離脱へ 「我が国経済の非常事態は終わった」。今年10月13日に、アイルランドのエンダ・ケニー首相はこう宣言した。この小国は一時、深刻な銀行危機に追い込まれていた。ケニー首相は12月15日をもって、アイルランドがEUの救済プログラムの管理下から脱することを明らかにした。 元々小さな農業国だったアイルランドは、90年代に法人税を12.5%という西欧で最も低い水準に引き下げた。これは、ドイツやフランスの半分以下であった。低い法人税率に魅せられて、米国や英国の企業は欧州の拠点をアイルランドに設置した。最初は主に製造業がアイルランドに進出した。次第に金融機関もこの国に子会社を作る
今回取り上げるのは―― Adner, R., & Levinthal, D. L. 2004. What is not a real option: Considering boundaries for the application of real options to business strategy. Academy of Management Review, 29: 74-85. Shimizu, K., & Hitt, M. A. 2004. Strategic flexibility: Organizational preparedness to reverse ineffective strategic decisions. Academy of Management Executive, 18 (4): 44-59. 今回は再びアカデミックな論文です。最初の論文は第一著者
今、韓国人は「丙子胡乱」(ピョンジャ・ホラン)を思い出す。急速に勃興した清帝国に逆らった結果、民族的な屈辱を味わった事件だ。では、400年も前の事件が「なぜ今」なのか――。読者と考える。 「滅びる明」に賭けた朝鮮 「『異様な反日』を生む『絶望的な恐中』」を読んで、米国が大好きな韓国人が、中国の言うことばかり聞くようになったわけが、ようやく分かりました。中国を心底、恐れているのですね。 鈴置:ええ、丙子胡乱により「中国には逆らってはいけない」という意識が民族のDNAとして染みついたかに見えます。 では、その不愉快な記憶であるはずの「丙子胡乱」が、なぜ今、ちょっとしたブームになっているのでしょうか。 鈴置:韓国人にとって、その歴史的事件は現在の国際情勢と二重映しになるからです。朝鮮が清に攻められたのは、明こそ宗主国と信じていて、台頭する清に素直に服属しなかったためです。 明の求めに応じ、清に国
最近、インテリジェンス(諜報活動)に関するトピックが何かと話題になっている。 米国の公安であるNational Security Agency(NSA)の仕事を請け負っていたエドワード・スノーデン氏がその情報を公開してからもう3ヶ月以上が経つが、今も余波は続いている。最近明らかになったのは、NSAが敵国だけでなく、友好国であるドイツのアンゲラ・メルケル首相の電話やメキシコのフェリペ・カルデロン元大統領の電子メール、フランス在住者数百万人の電話記録などを盗聴・閲覧していたことだ。 メルケル首相も、フランスのオランド大統領も米国のオバマ大統領に抗議の電話を入れている。ヨーロッパの情報取得については、各国のNSAの協力を得てのことだったとされているとはいえ、普段友好関係を築いている国家主席から抗議を受けるのは随分と嫌な経験だっただろう。 日本でも、特定秘密保護法案が自民党から提出され議論を呼んで
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